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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年07月09日(月) --

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『教養としての〈まんが・アニメ〉』

ここ十年のミステリ復興に際し、 「今の若い読者は『古典』を知らない」 「◯◯(古典作品)も読んだ事がないのに ミステリ作家志望などという若者が多い」 といった批判の声が多く聞かれました。

同じ傾向はマンガやアニメ、ジュニア向け小説といった いわゆるサブカルチャー系列の作家を目指す若者達にも顕著らしく、 専門学校で彼らに講義をした際、当然知っていると思われた 「(まんが・アニメの)古典を知らない」学生達とのすれ違いに ガクゼンとした著者達はいわゆる「おたく的教養」を後世に 伝えるべく決然としてキーボードに向かいました。 ガイドブック的知識の伝達ではない形で、次の世代に 当時自分達が「古典」の何に感動したのかを具体的に「伝え」ようと ──当初は、その目的であったのでしょう。

実際、本書の第二部、アニメ論においては 編集者のササキバラ・ゴウ氏が日本が世界に誇る アニメ作家ひとりひとりの作品における姿勢や方法論を 手堅く解説していて、 アニメ作家志望者にむけての教科書としてばかりでなく、 昔TVで見ていた私等にも子供ごころになんとなく 気になっていた点がつまるところ 「作家性」よるものだった事を納得させてくれてます。

さて問題(笑)は第一部、まんが論パートの書き手、 今やまんが原作および小説家としてカリスマ的人気の 元かなりアヤシイ漫画雑誌編集者大塚英志氏、 彼の語る戦後まんが論は古風でありながら それゆえ現代においては特に意味深いと思われる視点で展開します。 それは「身体性」。 果たしてこれが次世代作家に古典を読ませる 契機になるかどうかは別問題として(それが当初の目的では?)、 だいたいテキストに引かれている作品になじみのある私などは なるほどなるほど、そうきたか!と膝を打つ事度々。

手塚治虫によって「記号的身体」(マンガっぽい絵)を 与えられた戦後マンガが、その内面を表現しようと苦悩し 「生身の身体」を得るための葛藤を、 壮大にかつ妖しく描く歴史ミステリ(違うだろ)! 大塚の操るキーワード「アトムの命題」とは、 「フロルの選択」とは。 そして「教養」というタイトルに込められた真の意味は。 ‥‥という読み方は御本人の意図した事では 全くないのでしょうが、一つ一つの作品が 「紹介」としてよりは「証拠」として読めるので ミステリ的な角度でも楽しめてしまうのです。

「Please make me a real boy」 今年の主力映画の主人公のセリフですが、 日本のまんがは五十年以上この願いを抱いてきたのでしょうか。(ナルシア)


『教養としての〈まんが・アニメ〉』 著者:大塚英志+ササキバラ・ゴウ / 出版社:講談社現代新書

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