一ヵ月半はあっという間に過ぎていった。 結局このバイトは、以上のようなことの繰り返しで幕を閉じた。 今考えると変化のない毎日だった。 でも、前にも書いたが、ぼくはこの仕事が気に入っていた。 社会に出る感触を肌で味わっていた。 給料のありがたさを知ったのも、この時が初めてだった。
バイトが残り一週間になった頃から、「これが終わったらどうする?」とかいう話をSさんやIKなどとしていた。 Sさんは「ここが終わったら、旅に出る」と言っていた。一つのバイトが終わるといつも旅に出ているとのことだった。 IKは「すぐに就職を探す」と言っていた。 ぼくはそこからのことを考えられずにいた。 Sさんみたいに旅に出ることも、IKみたいに就職を探すことも、ぼくには考えられなかった。 何かやり残しているような気がしてならなかった。 結局は「また流れに任せて生きてみよう」というところに落ち着いた。 ラジオから、ふきのとうの「風来坊」が流れていた。
完
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