予備校時代というのは、ぼくにとって小学校から続く一つの流れに過ぎなかった。 何ら生活に変わりはなかった。 相変わらず怠け者だった。 好きなこと以外にエネルギーを使うことをせず、暇があれば寝てばかりいた。
さて、一年間全然勉強しなかったのかというと、そうでもなかった。 受験前の一ヶ月間はみっちりやった。 1月に高2の同窓会があった。 みな大学や短大に行っている。 予備校通いはぼくを含めて3,4人しかいなかった。 引け目こそなかったが、やはり何かが違う。 何か余裕みたいなものがあって、充分青春している、という感じがした。 またこいつらと真剣に遊びたいな、という気持ちでいっぱいになった。 でも、そうするためには大学に入らなくてはならない。 そのためには受験というものに興味を持たなければならない。 もうその頃には、予備校には行ってなかった。 一生懸命勉強している人の邪魔をしたら悪い、という理由で勝手に退学したのだ。 「飽きた」というのが本音だったのだが。
とにかく机に向かった。自宅浪人の開始である。 まず不得手科目の克服だ、と英語の参考書を開け取り組もうとした。 その時、ぼくはふと英語の前にもっと不得手なものがあることに気がついた。 「そうだ! おれの一番不得手なものは勉強だったんだ!」 もう笑うしかなかった。 勉強の仕方がわからない。 かといって、今さらそんなことを言っても始まらないので、英語は「試験に出る英単語]]で単語だけ覚えることにした。 日本史は、年表を覚えることに専念した。 意味もなく年表を覚えるのも重労働だった。(後年大の歴史好きになるのだが、この頃はまだ何の興味もなかった) 国語は、詩作と姓名判断でまかなった。 受験勉強とはいっても、一夜漬けを一ヶ月続けたに過ぎなかった。 結局、また落ちた。
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