講習が終わった日、家に帰ってから、ぼくは緊張について考えていた。 前に書いたが、柔道や野球の試合だとかカラオケとかでは、緊張で失敗したことがあった。 だが、それは人生において重要なものであったか? いや、違う。 別に負けても何ということはなかったし、緊張で歌えなくても、その後の人間関係に支障をきたしたことはない。
では、人生を左右するような場面ではどうだったのかというと、そこには失敗の記憶がないのだ。 つまり大舞台では、一度もこけたことはないということだ。 あ、大学には落ちた。 しかし、それはぼくの中ではそれほど重要なことではなかった。 元々合格する気がなかったのだからだ。
ということで、大学受験以外のことは大概うまくいっている。 就職試験も、希望する企業はすべて合格。 自動車免許の時も仮免、本検、学科試験は一発で合格している。 結婚式などで大勢の人の前でスピーチしたり歌ったりする時は、その直前に緊張はあるものの、本番はえらく落ち着いていて、無難にこなしている。 というか、予想以上にウケがいい。
そう考えていくうちに、ぼくは本番に強い人間だという結論に達した。 これまで本番に弱いと思ったのは、緊張のほうに意識が行っていたからだ。 そう思うと、これからの人生に勇気が出てきた。 明日、仮に武道館でコンサートをやったとしても、緊張負けすることはないだろう。 もう大丈夫だ。
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