「みんみんみんみん、せみがなく もくもくもくもく、くもがわく もうすぐたのしいなつやすみ」 ぼくが小学校1年の夏休み前に、国語で習った文章だ。 戦後に入ってからは国定教科書ではなくなったので、その教科書会社で掲載している文章が違うと思う。
他に、この時期に習ったもので憶えているのは、「小さい白いニワトリ」くらいだ。 「小さい白いニワトリ」というのは、ブタ、ネコ、イヌとニワトリの出てくる物語で、ある時パンを作ろうという話になった。 ところが、「ブタはいやだと言いました。ネコもいやだと言いました。イヌもいやだと言いました」と誰も自分が作るとは言わない。 しかたなくニワトリは、ひとりでパンを作った。 さて、パンができた。 で、ニワトリはみんなに聞いた。 「このパン、誰がたべますか?」 すると、「ブタは食べると言いました。ネコも食べると言いました。イヌも食べると言いました」とみんな食べると言う。 それを聞いた「小さい白いニワトリは、このあと何と言ったでしょう」。 そこでこの物語は終わっていた。 記憶が曖昧なので、一字一句は間違っているかもしれないが、あらすじはこれでよかったと思う。
先生はみんなに尋ねた。 「ニワトリは、いったい何と言ったんでしょうね?」 指された生徒のほとんどが、 「『あんたたちにはやらん』と言った」と答えていた。 「『あんたたちは誰も手伝おうとしなかったくせに』とか文句を言いながらも、ニワトリはみんなに分けた」と言う生徒も中にはいた。
で、先生の言った答は何だったのか、それが今となっては思い出せない。 が、確かニワトリは文句一つ言わずに、気持ちよくパンをみんなに分けたのではなかっただろうか。 そういうのが、あの頃の一般的な教育だったし、おそらくそれが正しいと思う。
さて、これが今なら、どういう答が正しいとなるのだろう?
|