オロナミンCを初めて飲んだのは、小学校6年の時だった。 当時、巨人の星のスポンサーが大塚製薬で、いつも大村崑がオロナミンC片手に「おいしいとメガネが落ちるんですよ」と言っていた。 あれを見るたびに、一度飲んでみたいものだと思っていた。 だが、値段が高かった。 確か100円近くしていたと思うが、一日の小遣いが10円20円程度の小学生には到底買える代物ではなかった。 そこで、せめて気分だけでもと、容器が似ているベビーコーラを飲んでいたのだった。
その年の秋のこと、母の会社のバスハイクがあり、ぼくはそれについて行った。 会社の人たちが持ってきたクーラーボックスには、ビールやジュースがたくさん入っていた。 ぼくはその中にオロナミンCが入っているのを見つけた。 一人のおじさんが、 「しんた君は何を飲みたいね?」と聞くので、 ぼくはすかさず、 「オロナミンC」と答えた。 ようやくぼくは、念願のオロナミンCを飲むことが出来たのだ。
初めて飲むオロナミンCは、少し酸味がかって、甘かった。 こういう味を味わうのは生まれて初めてで、それまでに飲んだどのジュースよりもおいしく感じたものだった。
それから十数年経ち、ぼくは毎日のようにオロナミンCを飲むようになった。 ところが、小学生の頃に味わった感動が感じられない。 全然味が違うのだ。 これまですっと、量産するようになったので、味も変わったのだろうくらいに思っていた。 しかし、そうではなかった。 そのことに気がついたのは今日である。
今日、およそ1年ぶりにオロナミンCを口にした。 何の気なしに飲んでいたのだが、飲んでいくうちに真顔になった。 小学生の頃に味わった味に戻っていたのだ。 しかしおかしい。 味が変わったなんて聞いたことがない。
思い当たることがある。 前に飲んだのは、タバコを吸っていた頃だ。 ぼくは、オロナミンCをいつもタバコの友として飲んでいた。 ということは、タバコの味がミックスされてオロナミンCを飲んでいたわけだ。 だから、成人後は昔のオロナミンCの味がしなかったのだ。 そういうわけで、いよいよ禁煙がやめられなくなった。
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