小学生の頃、上履きを裸足で履いたことがあるだろうか? 最初のうちはそうでもないのだが、だんだん蒸れてきて、中が腐っていき、最終的には破れる。 その過程における臭いというのがたまらない。 特に、腐って中がボロボロになった時に、足の指に付着するカスの臭いは強烈である。 よくぼくたちはそのカスを集めて、誰のが一番臭いかという競争をやったり、「これ臭うてみ」と女子の鼻のそばに持っていったりしていたものだ。
そういう臭いも、もう過去の思い出の一つになってしまった。 …と思っていたら、ひょんなことからその臭いに遭遇することになったのだ。 新しい職場、そこは段ボール箱に入った商品が数多く積み上げられている。 その段ボールを積み上げたり、降ろしたりするのが、今やっているぼくの仕事の一つである。 段ボールを素手で触ると、なぜか手が荒れる。 そのため軍手をはめて作業していたのだが、どうも軍手は弱い。 だいたい1週間程度で、指先が破れてしまうのだ。
そこでもっと強いのはないかと探してみると、工事の人がよく使っている、手のひら部分がゴムで覆われた手袋を見つけた。 そこには『強い』と書かれていた。 「これだ」と思い、ぼくは軍手よりもはるかに高いその手袋を買った。
なるほど強度はいいようだ。 1週間経っても2週間経っても破れない。 「これは安い買い物をしたものだ」とぼくはその時思った。 だが、その手袋をすると、えらく汗をかくことに、ぼくはその時気づかなかった。
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