頑張る40代!plus

2006年03月30日(木) 還暦デビュー?

ぼくが中学生の頃まで、隣の家にミノルという子が住んでいた。
ぼくより3つ年下で、ぼくの弟分的存在だった。
ミノルはいつもぼくの後を追ってきた。
ぼくが柔道を習うと、同じく柔道を始める。
高校もぼくの行った高校を選んだし、ぼくの影響からなのかギターも始めた。
そのため何度か、デモテープ作りに参加させたこともある。
その後は、お互い仕事が忙しくなったせいもあり、あまり会うことがなくなった。

さて、昨年末のある日のことだった。
そのミノルから久しぶりに電話があった。
「しんちゃん、おれ会社辞めた」
「辞めた…、どうしたんか?」
「面白くないんよ」
「辞めて、これからどうするんか?」
「今のところ何もないんよ。しんちゃんところ募集してない?」
「あるわけないやんか。人減らしよるのに」
「ああ、そう…。他に何か心当たりあったら教えて」
「わかった。あったら連絡する」
そう返事して電話を切ったのだが、そうそう就職などあるわけがない。
あったら、こちらが世話して欲しいくらいである。
ということで、その後何も連絡せずにいた。

2日前のこと。
風呂から上がって、携帯電話を見ると、画面に『着信あり』の文字があった。
誰からだろうと見てみると、ミノルからだった。
こちらから電話してみると、今度はあちらが出ない。
しかたなく切ったのだが、その後しばらくしてからミノルから電話が入った。
受話器の向こうはえらく賑やかである。
「もしもし、しんちゃん?」
「おう。どうしたんか?」
「おれ今、焼鳥屋でバイトしよるんよ」
「焼鳥屋で?」
「うん。飲みに来て」
「おまえ大丈夫か?焼鳥屋のバイトくらいじゃ生活できんやろうが」
「いいんよ。昼間は電話会社で仕事しよるけ」
「社員か?」
「いや、そこもバイト」
「そうか…」

「まだギター弾きよると?」
「最近また弾きだした」
「ねえ、還暦デビューしようや」
「還暦…?」
「うん。今からでも遅くないっちゃ。月夜待とかいい歌があったやん」
「まあ、ネットでそういう歌の配信しよるけど」
「やろうや」
「やるのはいいけど、おまえはギター弾きよるんか?」
「いいや。おれ、サックスがいいもん」
「サックス…?」
「うん」
「わかった。サックスでも何でもいいけ、練習しとけよ。その時は呼んでやるけ」
「わかった」

サックスと月夜待…。
ちょっとイメージが違う。

しかし、何で還暦デビューなのだろうか。
あと10年以上もあるではないか。
こちらは今日明日の話をしているのに、いったい何を考えているのだろう。


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