さて、仕事が終り、いつものように嫁ブーを迎えに行った。 車の中でぼくは、「おまえ、『ラブユー東京』知っとるか?」と聞いてみた。 「知っとうよ。『七色の虹がー、消えてしまったのー♪』やろ?」 「おう」 「それがどうしたと?」 「朝から、その歌が頭の中で鳴り響いてのう」 「ああ、そういうことってあるね」 「で、中リンに、知っとるかどうか聞いてみたんよ」 「知っとった?」 「いや、知らんかった」 「そうやろね。わたしだって、最初の歌詞以外はあんまり憶えてないんやけ」
そんな会話をしてるうちに家に着いた。 ぼくが着替えている時だった。 突然嫁ブーが大声を上げた。 「しんちゃん、来て来て」 「どうしたんか?」 「テレビにロス・プリモスが出とるよ」 「えーっ?!」 行ってみると、確かにそこにロス・プリモスが出ていた。 そして『七色の虹がー♪』と歌い出した。
それを見て嫁ブーが、「ねえ、中リンに教えてやったら?」と言った。 「そうやのう。メールしてやろう」 そう言ってぼくは携帯を取り出し、メールを打ったのだが、なにせぼくの打ち込みは遅い。 そのせいで、『ラブユー東京』は終わってしまった。 「あーあ、間に合わんかった」
と、その時だった。 一通のメールが入った。 見てみると、何と噂をしていた中リンからだった。 そこには、『ラブユー東京:聴きましたよ』と書いてあり、その番組の写真も添えられてあった。 嫁ブーにそれを伝えると、「この時間帯はスマップとかのチャラチャラした番組が多いのに、ロス・プリモスが出るような番組見よるとか、中リンは偉いねえ」と妙に感心している。 「うーん、それは違うんやないか。中リンがロス・プリモスを好んで見よるとは思わんのう」 「ああ、そうか…」 「きっとお母さんが見よるんやろう」 「そうかもね」 「しかし、偶然やのう。もしかしたら、『ラブユー東京』は中リンの運命の歌かもしれんぞ」
そういう話をしている時だった。 今度は、敏いとうとハッピーエンドブルーが出てきた。 そこでぼくは中リンに、『星降る街角、始まるぞ』と書いて送った。 そしてその歌が終わった後、中リンから再びメールが届いた。 そこには、『ウォンチュー(星降る街角):お母さん熱唱してました』と書いてあった。 やはり、中リンが見ていたわけではなく、中リンのお母さんが見ていたのだ。
ところで、朝からずっとぼくの頭の中を『ラブユー東京』が鳴り響いていたのは、夜にその本人がテレビに出てその歌を歌うのを予知していたことになるのだろうか。 ぼくはテレビにロス・プリモスが出るなんて、まったく知らなかったし、もちろんムード歌謡の面々が出ることも知らなかったのだ。 そういえば、ここ最近、時々体が少し熱くなることがある。 もしかしたら、時々神が宿っているのかもしれないなあ。
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