ぼくの家からセブンイレブンまでの距離は、およそ50メートル。 すごく便利である。 特に嫁ブーは、コンビニの近くに住むのが夢だったので、大変満足している。
ところが数日前、しろげ家に激震が走った。 何と、その便利なセブンイレブンが移転するというのだ。 何でも、店の前に路上駐車する車が多く、他の車の通行の妨げになっているから何とかしろ、と警察から指導を受けたための措置なのだという。 実は、そのセブンには駐車場がない。 いや、あることはあるのだか、店の敷地内にないのだ。
さて、その移転先はというと、現在店が建っている場所から50メートルほど離れた場所、家からだと50メートルプラスになるから、およそ100メートルほどの距離になる。
その話を聞いて落胆したのは嫁ブーだった。 「朝刊を取りに行ったついでにパンを買ってこれる距離だったのに…。移転したら途中信号もあることだし、ついでに買いに行くという距離じゃなくなるやん」 夜は夜で、「夜、セブンの看板に灯りがついているのを見るのが好きだったのに…。あーあ、遠くなるのか…」と言う始末だった。
嫁ブーがそうこぼした翌日に、移転地の工事は始まった。 「ああ、とうとう始まったね」 そう言って嫁ブーは肩を落とした。
そのまた翌日、落胆している嫁ブーに電話が入った。 「ねえ、あんたんちの隣のセブン、移転するらしいね」 「うん…」 「冷蔵庫のような存在やったのに、残念やねえ」 「うん…」 嫁ブーは力なく返事をしていた。
ところが昨日のこと。 いつものように仕事が終わってから嫁ブーを迎えに行くと、嫁ブーは晴れやかな顔をして車に乗り込んできた。 「おっ、元気いいやないか」 「そりゃそうよ」 「何かいいことあったんか?」 「うん。セブンの移転話があったやん」 「ああ」 「あれね、実はセブンじゃないんよ」 「えっ、セブンじゃない?」 「うん」 「じゃあ、何なんか?」 「ファ・ミ・マ」 「ああ、ファミマか。じゃあ、セブンはどうなるんか?」 「セブンはねえ、そのままらしいんよ」 「そうなんか。あの話はガセやったんか」 「うん」 「ということは、家から100メートル圏内に、コンビニが二つになるんやのう」 「そういうこと」
嫁ブーの声は弾んでいた。 いったんは移転すると思って落胆していたから、その喜びは倍にもなっていたのだろう。 ということで、これまでいつもマーガリンジャム入りが定番だったパンだが、これからはバラエティが増えることだろう。 出来たら、シュガーバター入りのパンが食べたい。
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