昼食中に呼び出しがかかった。 行ってみると、そこに店舗担当の課長がいた。
「何か欲しいものがあるんですか?」 「いや、その件で来たんじゃない」 「そうですか」 「実は、今後のことなんやけどね」 「ああ、そっちのほうですか…」
前に部長と話をしたことを書いたが、課長はその話の続きにきたようだ。 部長は招集をかけると言っていたが、どうやら今日はその前段階の個人面談らしい。
「今度電気の売場がなくなるわけなんやけど、今後どこか行きたい部署とかある?」 「行きたい部署ですか…」 「本音で言ってもらいたいんだけどね」 「どうせ生鮮とかでしょ?」 「生鮮はだめなん?」 「ええ。電気で25年やってきた人間が、包丁片手に立ち回れるわけないじゃないですか」 「そうやねえ…。でも、そこしかないとしたらどうする?」 「家族には『もし生鮮になるなら辞めるかもしれん』と言っているんです」 「そうか…。じゃあ、他に希望とかあるんね?」 「これと言ってないから困ってるんです」 「他の事業部はどう?」 「前の店長が行ったところならいいです。そこには行けませんか?」 「ああ、あそこね。あそこは難しいよ。他にないんかねえ?」 「うーん。でも販売はもうしたくないし…。それ以外で何かありませんか?」 「販売以外?」 「ええ、販売だと、どうしても電気のほうがよかったという気持ちになるでしょ?そうなると、仕事に身が入らなくなると思うんです」 「ああ、そうか」 「急にどこがいいかと言ってこられても、こちらは何も準備してないですよ。もう少し時間をもらえませんか?」 「もう少しと言ったって、もう時間がないんよねえ…」
煮え切らないぼくと、これと言った提案の出来ない課長の会話は、その後しばらく続いた。 だが、答は見えてこない。 結局、結論は見送りとなった。
課長が帰った後に、先輩社員が「何と言われたんか?」と聞いてきた。 ぼくがその内容を語ると、その人は「おまえ、辞めるとか言ったんか?」と言う。 「ええ」 「何で『どこでもいいです』と言わんとか。辞めるとか言ったら、相手の思うつぼやないか。ただでさえ、おれたちは余剰人員なんやけ」 「『本音で言え』と言うから、辞めることも選択肢としてあると言ったんですよ」 「そうか…。でも、ああいう時は『どこでもいい』と言ったほうがいいぞ」 「おれの場合、どこでもよくないから、『どこでもいい』とか言えませんよ」 「ああ、そうやのう。おまえは電気以外やったことないけのう」
さて、第三段はいつになるのだろうか。 そしてぼくは、どうなるのだろうか。 先輩氏の話では、今日本音を言ったことで、ぼくはろくな部署に回されないだろうということだ。
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