今日、たまたま会社の事務所で、本社の部長と二人っきりになった。 そこでの会話である。
「しんた君は営業やったことがある?」 「営業…、セールスですか?」 「ああ、そんなところやね」 「ないですよ」 「そうか。じゃあ、ずっと販売ばかりやってたんか?」 「そうです」 「電気の?」 「ええ」 「何年になるんかなあ?」 「25年です」 「…そうか。じゃあ、いきなり他の部署に、とか言われても戸惑うよなあ」 「はい」 「いや、君も知っているとおり、4月からうちの会社は電気を扱わんようになるやろ」 「ええ」 「で、君に次の仕事を与えるようになるんやけど、いったいどんな部署が君に向いてるかわからないから、唐突に質問したわけやけど…」 「そうですか」 「何か、自分でここに行きたいとかいう部署はある?」 「うーん…」 「でも、今回のことがわかってから、いろいろ考えとるんやろ?」 「ええ。転職も含めたところで考えてはいます。でも、答なんてすぐには出てこないですよ」 「そうやろうなあ。特に君の場合、ずっと専門職でやってきたわけだからなあ」 「質問なんですけど、自分の選択肢のひとつに出向というのがあるんですが、それは出来ますか?」 「出向かあ…。ちょっと難しいなあ」 「そうですか…」
「まあ、その件で今度、君も含めた該当者の面談をやるようになっとるんよ」 「そういうのがあるんですか?」 「うん。おそらく3月に招集かけるやろうけど、その時は、自分の言いたいこととか、何もかも包み隠さずに言って欲しいんだよね。自分の言いたいことを言わないと、後でとんでもない人事になったりするからね。それじゃあ、君にとってマイナスになるばかりだ」 「そうですね。じゃあ、その時は言いたいことを言わせてもらいます」 「うん。頼んだよ」
ということで、長いようで短かった部長との会話は終わった。 まあ、会社もいろいろと考えてはくれているようだ。 しかし、その会社自体がだんだんおかしい方向に進んでいる。 ぼくはいったいどうなるのだろう。 いっそ、すべてを捨てて、最後の選択肢であるストリートミュージシャンにでもなるかなあ。
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