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2006年01月25日(水) いい手相

「おお、これはいい手相ですねえ」
東京にいた頃、手相見のおっさんに手相を観てもらったことがあるのだが、その時にそう言われた。
何でも、何十万人に一人の手相だそうで、知能線が他の人と違うというのだ。
そのおっさんによれば、知能線が人と違うというのは、そのまま知能が人と違うということだそうである。

知能が違う。
これをどう解釈したらいいのだろう?
知能が人と違うぼくには、それがわからない。
そこで、その人にその意味を尋ねてみた。
「知能が違うというのは、頭がいいという意味ですか?」
するとその人は、
「そういう意味もないことはないんですが、この場合、人と比べて変わっていると捉らえたほうがいいでしょう」と言う。
「あのー、それって変わり者だということですか?」
「そうですね。そう捉らえてもらって結構かと思います」
「‥‥」
ぼくは幼い頃からずっと、人から「変わってるね」と言われてきた。
そのたびに、「おれが変わっとるんやない。そう見るおまえが変わっとるんたい」と、自分が変わっていることを否定していた。
だが、手相で「変わっとる」と言った人のほうが正しかったと証明されてしまったのだった。

それはともかく、手相見のおっさんは「いい手相です」と言った上で「変わっていると捉えろ」と言ったわけだが、ぼくにはこれが矛盾しているように思える。
どう考えても、『いい手相』と『変わり者』とが結びつかないからだ。
もしかして、そのおっさんは、変わり者であることが幸運とでも思っていたのだろうか?
もしそうなら、おっさんの目には、世の中の人すべてが幸せ者に見えていたことだろう。

さて、そのおっさんは、ぼくが変わり者であると鑑定した以外は、仕事運だとか恋愛運だとかいう世間一般の占いはやってくれなかった。
きっと見料が500円だったから、そこまで詳しくは鑑定しなかったのだろうが、もしあの時、仕事運とか恋愛運とかを観てもらっていたら、ぼくのその後の運命も大きく変わり、今頃転勤なんかで悩まずにすんだのかもしれない。
後悔先に立たずというが、実に残念なことをしたものだ。


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