『冬』 世の中が 寒さの中で動いている。 騒音、騒音 ここにはもう人間の会話はなく ひと時の暖かみもない。 右から左、 左から右、 通り過ぎるものはみな 文明の枠でしか呼吸をしてない。 さて、 そこに飛び込むことが尊いのか、 そこから逃れることが尊いのか、 この季節は答をまだ 凍結させている。
今から14年前の1月に書いた詩である。 ちょうど前の会社を辞めて、再就職口を探していた時期だった。 その頃は、朝は8時に起き夜は12時に寝るといった、けっこう真面目な生活をおくっていた。 同じくプー太郎をやっていた20歳前後の頃のような、すさんだ生活をやっていたわけではなかった。 これは、やはり社会人という自覚が、そういう定刻生活をさせていたのだと思う。
さて、朝早く起きて何をやっていたのかというと、週に何度かは近くのコンビニに行って就職情報雑誌や新聞を買い込んできて、そこに書いてある会社で働いている自分の姿を想像しながら、向き不向きを識別していた。 中には演歌歌手の付き人という職業もあり、それも想像してみたのだが、付き人をやっている自分の姿は、どうもチグハグで、結局却下となったのだった。 最終的に、ぼくに向いている職業は、やはり販売業だという結論に至り、絞りに絞って今の会社を選んだわけだ。
その間、特に焦りなどはなかった。 心のどこかに、どうにかなるという思いがあって、その思いがずっとぼくを支えていた。 そのため、十数社の面接を受け、いくつかの「これは!」という会社に落とされはしたものの、落ち込むようなことはなかった。 一社落ちるたびに、人生が終わったような気がして、深く落ち込んでいた20歳当時の自分からは、想像できないことである。 その差は、やはり人生経験からきていたのだろう。
あれから14年。 今のぼくには、例えば3年後、販売業をやっている自分の姿が想像できないでいる。 そこで、もっと自分に合っている職業があるのではないかと、いろいろな職業をやっている自分の姿を想像している。 その中には、文章を書いたり、歌を歌ったりしている自分もいるのだが、どうもはっきりとした画が浮かび上がってこない。 この先、いったいどうなるのだろうか。 季節は奇しくも冬。 この季節は、答をまだ凍結させている。
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