今日は今年最後の休みだった。 ということで、カニを買いに行った。 数年前、近場のカニの加工工場で直売をやっていることを知り、買いに行った。 それ以来、そこでカニを買うことが、我が家の年末の恒例行事になっている。 とはいえ、買うのは母で、ぼくと嫁ブーはただの付き添いに過ぎない。
昨年は昼頃行ったために、駐車場も満車状態で、特設の直売場はお客でごった返していた。 そこで今年は時間をずらし、夕方に行くことにした。 さすがに駐車場もガラガラで、直売場にもお客はあまりいなかった。 しかし、時間が時間だったために、すでに目玉商品は売り切れていた。
しかたなく他の商品を漁っている時だった。 横いた店員とお客のやりとりが聞こえてきた。 「ズワイガニよりタラバガニのほうが身がたくさん詰まってますよ」 「前によその店で、そういうふうに言われて、タラバガニを買って帰ったんだけど、食べてみると、全然身が入ってなかったのよね」 「そうなんですか」 「今あなたは身がたくさん詰まっていると言ったけど、絶対に身が詰まってるって保証するの?」 「それは…」
いるんですよ、どこにでもこういうお客が。 そういうふうに突っ込まれると、店員としてはどうにも答えようがない。 食べ物なんだから、いや食べ物でないにしろ、絶対なんてありえないのだ。 そこでカニを割って見せるわけにもいかないし、かといって「うちのは大丈夫ですよ」なんて言ってしまうわけにもいかない。 もし、そのカニがそのお客が思っている『身が詰まっている』状態でなかった場合、後が大変である。 「あなたが、大丈夫って言ったから安心して買ったのよ。それなのに全然身が詰まってないじゃない。どうしてくれるの?」などと、いちゃもんをつけてくるに決まっているのだ。 だから、安易に「うちのは大丈夫ですよ」なんて言えない。
ぼくの店でも、そういうことは多々ある。 この間も、「このポット買おうと思っているんだけど、ちゃんと沸くんだろうな?」などと言ってくるお客がいた。 ぼくが「沸きますよ」と言うと、「絶対に沸くんだろうな?」と言いだした。 「機械物ですから、絶対とは言えません。でも、悪ければ、ちゃんと交換させていただきます」と答えると、今度は「この店は、沸くかどうかのテストもしてくれんのか?」などと言いだした。 ぼくも長いこと専門店や量販店で家電販売をやっているが、通電するかどうかのテストならともかく、沸くかどうかのテストなんてやったことはない。 そこで「沸くかどうかのテストまではやっていませんが…」と言うと、「そんな店では買えん」と言って帰ってしまった。 どの店が沸くテストをやってくれるのか、教えてもらえばよかったと思っている。
さて、そのカニのお客も何も買わずに、ブツブツと文句を言いながら帰って行った。 ああいう性格だから、きっとどこに行ってもそんな調子なのだろう。 疑うことをしだしたら、切りがない。 結局そういう人は損をするのだ。 最初から疑うことをせずに、その店を信じていれば、ちゃんと店は応えてくれるものである。
我が家の人間は、誰も人を疑うことをしない。 だから、今日は身のぎっしり詰まったおいしいカニを、堪能することが出来たのだった。
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