頑張る40代!plus

2005年11月13日(日) 純恋

高校1年の秋のことだった。
「しんた、Y子のことどう思う?」
友人のKちゃんが、突然ぼくにそう聞いてきた。
ぼくはドキッとした。
なぜなら、Y子はその当時ぼくが好きだった女性だったからだ。
ぼくはそのことを誰にも教えてなかったから、てっきりKちゃんにそれを見透かされたと思った。
だが、真相は違うところにあった。

「Y子…、Y子ねえ…。ま、かわいい方やない?」
ぼくは、自分の気持ちをKちゃんに悟られないように、平生を装って言った。
すると、Kちゃんは目を輝かせて言った。
「そうやろ。かわいいやろ!」
「うん、まあ…」
「実はおれ、Y子とつきあうことになったっちゃ」
「えっ…」
ぼくは絶句した。
しかし、Kちゃんにぼくの変化を気づかせてはならないと思い、慌てて次の言葉を探した。
そして、零点数秒の沈黙が、次の言葉を探し当てた。
「どちらからアプローチしたと?」
「おれから」
ぼくは、Y子からのアプローチでなかったことに、少し安心した。
「ふーん。何と言ったと?」
「つきあって」
「Y子はすぐに返事したんね?」
「いや、躊躇しとったみたいで、『少し考えさせて』と言ったんよ」
「で、いつ返事もらったんね?」
「昨日」
「そう…」
5分かそこらの会話だったが、この会話が今もなお、耳の奥にこびりついている。

その後の二人はどうなったのかというと、長続きしなかった。
一ヶ月くらいつきあった後に、別れたのだ。
別れはY子から切り出したらしい。
クラブ活動に専念したいから、というのがその理由だった。
そして、最後にY子は、こういうセリフを吐いたという。
「私、高校卒業するまで、誰ともつきあわない」

誰とも付き合わない。
誰とも付き合わない。
誰とも付き合わない…。
ぼくはこの言葉に縛られた。
そのため、Y子にその想いを伝えることが出来なかった。
もし、Kちゃんからそのことを聞かされてなかったら、ぼくは高校時代のいずれかの時期に、その想いをY子に伝えていただろう。
『Kちゃん、何でおれに言ったんか!?』
ぼくは運命を恨んだ。

その伝えられない想いが、ぼくを音楽に走らせた。
Y子がクラブ活動に専念するように、ぼくも音楽に専念しようと思ったのだ。
そして、いつかこちらを振り向かせてやる、と思ったわけだ。
だが、その思いは叶わなかった。
結局、8年間想い続けた末に、『月夜待』という歌を作り終わってしまう。


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