こたつを取りに行ったのは、午後1時過ぎだった。 朝から降り始めた雨がピークを迎えたのが、ちょうどその時間だった。 車を店の駐車場に置き、ぼくと嫁ブーは滅多に使わない傘を差して店に向かった。 店の中は雨にもかかわらず、けっこう多くの人が買物をしていた。 最初は座椅子でも見てみようかと思っていたが、雨のため何か気が重く感じたため、さっさと荷物を積んで帰ることにした。
「あのー、こたつを取りに来たんですけど」 「はい」 「これですけど」と、ぼくは契約書を見せた。 「えっ、配達になってますけど…」 「ええ、配達時間が合わなかったんで、急遽店渡しにしてもらったんです」 「ああ、そうですか。お待ち下さい」 そう言って、係員はパソコンを打ち始めた。 「しろげしんたさん。はい、確かにお預かりしております。商品を持って参りますので、少々お待ち下さい」
あとは嫁ブーに任せ、ぼくは駐車場に行き、こたつを車に乗せる準備をした。 何せ、120×90センチのこたつである。 いくらRV車とはいえ、そのままでは載らないだろう。 ということで、2列目と3列目のシートを倒すことにしたのだ。
これが大変な作業だった。 なぜかと言うと、後部のシートを倒すことが滅多にないから、倒し方がよくわからないのだ。 しかも大雨である。 全身ずぶ濡れになってしまった。
シートを倒すのに5分以上も費やしてしまった。 そして、再び店内に戻った。 ところが、まだこたつが来てないのだ。 嫁ブーに「まだか?」と聞くと、「うん、まだなんよ」と言う。 ぼくより気の短い嫁ブーの顔は、すでに怒りモードに入っていた。
それからしばらくして、倉庫の兄ちゃんみたいなのが、だらしそうに台車を押してきた。 「しろげしんたさんですか?」 「はい」 「ああ、こたつです」 そう言って、だらしく戻って行った。
ぼくと嫁ブーの前に、お買上げシールの貼ってない大きな段ボール箱が置かれたままになった。 他の係も知らん顔である。 ぼくは係に聞いた。 「あのー、これ持って行ってもいいんですか?」 「はい、どうぞ」 「このままでいいんですか?」 「はい」 「じゃあ、台車借りますよ」 「はい」 いらんこと言わんでいいから、さっさと持って行け、という感じである。
大雨の中、ぼくは台車を押して車を置いてある所まで行った。 鍵を開け、後部のドアを開き、台車に載せてあるこたつを持ち上げた。 「!」 店内では気づかなかったが、箱がえらく汚れているのだ。 ぼくは嫁ブーに、「おい、これ見てみ」と言った。 「えっ、何これ。埃まみれやん」 「おう。普通埃を取ってからお客に渡すよのう」 「うん。文句言ってこようか?」 「もういい。この店とは関わりたくない」 そう言って、さっさとこたつを車に載せ、台車を店内に持って行った。 「台車、ここに置いときますよ」 誰も返事をしなかった。
昨日も言ったが、所詮その程度の店なのである。 ぼくは改めて、その感を強くした。
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