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2005年11月07日(月) 嫁ブー顔を腫らす

昨夜もいつもと同じく、仕事が終わったあとで嫁ブーを迎えに行った。
従業員の専用門の前に車を停め、さっそく携帯で電話をかけた。
「着いたぞ」
「すぐ行きます」

しばらくしてから、嫁ブーが出てきた。
しかし、いつもと様子が違うのだ。
嫁ブーが顔を上げた瞬間、ぼくは「えっ?」と声を上げた。
左のあごのところに白い湿布のようなものを貼っているのだ。
ぼくは「もしかしたら…」と思った。

車に乗り込んだ嫁ブーに、ぼくは言った。
「おまえ、まさか虫歯じゃないんか?」
「ああ、これやろ」
そう言って、嫁ブーは湿布のようなものと指さした。
「昨日寝る時からおかしかったんよね」
「朝はどうもなかったやないか」
「うん、朝はね。昼頃からなんよ。あごがだんだん重くなってきて、それでこんなになったんよ」
「痛むんか?」
「いや、痛くはないんやけどね」
「明日、歯医者に行った方がいいぞ」
「うーん…」
「おれが行きよったS歯科がいいぞ」
「うーん…」

嫁ブーは歯医者行きに気が進まないようだ。
そこで、
「おまえ、そのまま放っといたら、脳に菌が入って大変なことになるぞ」と言って、脅しをかけた。
「えっ、大変なこと?」
「パーになるんたい」
「パーになると?」
「おう。元々パーのに、それ以上パーになったら面倒見きれんけの。さっさと実家に帰ってもらうわい」
「‥‥」
「いいか、明日は医者に行けよ」
「うん、わかった」
ぼくも、嫁ブーには『パー』が効くということが、よくわかった。

家に着くなり、ぼくは言った。
「じゃあ、さっそく撮ろうかの」
「えっ、何を」
「写真たい」
「写真!?」
「おう。その美しい顔を写真に納めとかなの」
「何が、『納めとかなの』ね。どうせその写真を、またヒロミに送るつもりやろ」
「決まっとるやないか。美しい顔は共有せなの」
「しんちゃんといい、ヒロミといい、ホントあんたたちよく似とるねえ」
「よけいなことは言わんでいい。はいポーズ」
ぼくはすぐさま、その写真をヒロミに送った。

さて、今日のこと。
嫁ブーは、朝一番に歯医者に行った。
10時半頃だったろうか、ぼくの携帯が鳴った。
嫁ブーからだった。
「今終わったけ」
「どうやった?」
「最高に腫れるまで治療できんらしいんよ」
「えっ、まだ腫れるんか?」
「うん。昔治療した歯のどれかの神経が、まだ残っていて、それが炎症を起こしとるらしいんよ。それで、腫れきらんと、どの歯か特定できんらしい」
「そうか、それは楽しみやのう」
「何が楽しみなんね」
「腫れあがった顔に決まっとるやろ」
「もう、人ごとかと思って」
「いいか、帰ったら、また写真やけの」

電話を切ったあと、再びぼくはヒロミにメールを送った。
『ボリ(嫁ブーのこと)の顔は、まだ腫れるらしい。帰ったら写真撮って送る』
すると、ヒロミからこんなメールが届いた。
『あの焼き鳥が、歯にはさまっとるんよ!腫れがとれたら抜歯やね。抜歯の会を作らんとね』
どうやらヒロミは、嫁ブーの腫れた顔よりも、抜歯のほうを期待しているようだ。


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