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2005年08月13日(土) 雲の中を歩く(前)

昨夜、『皿倉山灯籠まつり』に行ってきた。
昨年も一昨年も行っているので、我が家では、ほとんど夏の恒例行事になった感がある。
いったいどういう祭りなのかというと、ケーブルカーの山上駅から山の上ホテルまでの数百メートルの並木道沿いに、ただ数百個の灯籠の明かりと、その灯籠の下に吊下げられた風鈴の音があるだけだ。
夜店が出ているわけでも、これと言ったイベントをやっているわけでもない。
「何だ、たったそれだけか」と思うかもしれないが、たったこれだけのことでも人は集まる。
山の上という下界とは違った空気と、灯籠や風鈴が醸し出す異次元的な空間に浸りたいからだ。

とはいえ、たったそれだけのために、高いケーブルカー運賃を払っているわけではない。
前に何度も書いたとおり、この皿倉山は「新日本三大夜景」の一つなのだ。
そう、そこから見える美しい夜景がプラスされているからこそ、高い運賃も惜しみなく払えるわけだ。

ちょっと皿倉山の夜景について触れておくと、ぼくは幼い頃から、皿倉山から見た夜景に慣れ親しんできたのだが、そのためにそれが当たり前だとばかり思っていた。
ところが、日本三大夜景の一つである長崎稲佐山に行った時に、眼下に広がる夜景を一目見て、「これなら皿倉山から見た夜景のほうがきれいじゃないか」と思ってしまった。
皿倉山の夜景の美しさを認識した瞬間である。
その後、ぼくと同じことを思った人たちが、新日本三大夜景として、皿倉山を選んだということだ。

さて、ケーブルカーで山上駅に着いたぼくたちは、メインの「灯籠まつり」を後回しにして、すぐさまリフトに乗って山頂へと向かった。
そのリフトに乗っている時だった。
リフトに沿ってライトがついているのだが、そのライトの灯りに白い風が映し出されているのだ。
最初は煙だと思った。
ところがそうではなかった。
山頂に近づいた時、足下にその煙のようなものの固まりを見つけた。
白い煙のようなものの固まり、そう、それは雲だったのだ。

山頂は、かなり強い風が吹いていた。
その風に乗って、雲がやってくる。
ぼくたちの視界を、いきなり雲が隠す。
しばらくすると雲は飛ばされ、いつものきれいな夜景が顔を出す。
ところがそれも長続きはしない。
また新たな雲が山頂を襲う。
この繰り返しだった。


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