さて、フォークリフトの試験である。 試験場に行ってから一度練習し、それから試験となった。 練習では何とかうまくいったのだが、本番となると、どうも緊張してしまう。 何か失敗をやらかさないかと心配していたら、案の定やってしまった。 試験は、二人が試験場に出て、あとは控え室で待たされる。 いよいよぼくの番が近づいてきたので、ぼくは身だしなみを確認し、試験場へと向かった。 身だしなみというのは、試験を受ける時の格好である。 前にも書いたとおり、、作業着、脚絆、軍手、それとヘルメットの装着が身だしなみとなる。 ところが、控え室から出て試験場に向かっている時、なぜか頭が涼しいのを感じた。 どうしたんだろうと、頭を触ってみると、なんとヘルメットをかぶってないではないか。 そう、ヘルメットというのは、あの店長臭いヘルメットのことである。 ぼくはあわてて控え室に戻り、店長臭いヘルメットをかぶって、再び試験場へ出た。 試験官が、ぼくが遅れて出てきたのを見て、キッとにらんだ。 「まずい」と思ったが、ぼくは平生を装っていた。
前の人が終わり、いよいよぼくの番である。 スタートから一つめの難関である第一コーナーのクランクは何なく成功。 次の難関、というよりこの試験最大の難関は、そのコーナー内にある荷物をリフトに乗せることにあった。 ここで手間取ったりすると減点され、さらに失敗すれば即失格となる。 ということで、慎重かつ迅速にやらなければならないのだ。 ぼくもその心づもりでその難関に臨んだ。
ところが、緊張というのは、時に変なことをさせる。 クランクを曲がった時、コーナー内にラインが引いてあるのに気がついた。 よく見ると、その先は荷物の端に行くようになっている。 「なるほど、あのラインに沿って行けば、真正面に出るのか」 これは講習中には気がつかなかったことである。 もちろん教官も、講習中にそんなことをしろなんて、一度も言わなかった。 「きっと教官は、そのことを隠しとったんやろうな」 そう勝手に解釈したぼくは、そのラインに沿ってフォークリフトを走らせた。 ライン通りに進めばいいのだから、気が楽である。
ところが、それは間違いだった。 荷物からかなりそれた場所に着いてしまった。 ここは基本通り、荷物の方向を見て行けばよかったのだ。 そうすれば、自ずと荷物の真正面に行き着いたのだ。 「しまった、失敗だ!」 そこでいったんバックして、クランクを入り直そうかと思った。 しかし、時間制限があるので、それは出来ない。 「しかたない、ここは自力で何とかしよう」と試みることにした。 試行錯誤、おそらくもう一度やれと言われても出来ないような操作をして、結果的には何とかなった。 だが、そのせいでかなり時間を費やしてしまったのだ。 あとは順調にいった。 そして、試験官から一度も注意を受けることもなく、ゴールとなった。
ある人は「試験官に何も言われなかったら合格ですよ」と言っていた。 が、第一コーナーでの失敗で悲観的になっているぼくは、「あきれて何も言えんかったんやろう」と思っていた。 今更ながら、あのラインにごまかされたことが悔やまれてならない。
さて、その結果だが、実はまだわかっていない。 合否は15日頃に発表すると言っていた。 まあ、みんなの目の前で落ちたことを告げられないだけいいか。
ということで、フォークリフト・チャレンジシリーズは今日で終わった。 明日から、また日常が戻ってくるわけだ。
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