シリーズ『ヒロミちゃんがやってきた』はお休みです。
さて、今日はフォークリフトの実技講習があった。 昼からだったのだが、遅れてはいけないと思い、今日の午前中に予約していた歯医者はキャンセルした。
ぼくはこの講習の日が嫌で嫌でたまらなかった。 というのは、着慣れない作業着を着て、脚には脚絆を巻き、安全靴を履き、さらにヘルメットをかぶらなくてはならないからだ。 こういう装備をするのは、生まれて初めてのことなのだ。 どうも、そういう格好をしている自分がイメージできない。
いちおう、昨日安全靴に足をとおし、脚絆を巻いてはみたものの、何かピンとこない。 安全靴は借り物だから、どうも足にしっくりこない。 というより、少し小さいのだ。 そのため、指が締めつけられるように痛い。 が、安全靴はあくまでも靴である。 少し痛いのを我慢すれば何とかなるだろう。
一方の脚絆は、どうやって装着するのかさえわからない始末だ。 うちの店の人に聞いてみたのだが、全員が「そんなのしたことない」ということだった。 ネットで調べようかとも思ったが、そういうことを調べるのも面倒だ。 結局『その辺の人に聞くか』という考えにいたり、脚絆のことはそれ以上考えないことにした。
ぼくが一番悩んだのは、ヘルメットだった。 店で使っているヘルメットを借りていくことにしたのだが、あいにくヘルメットは一つしかない。 そのヘルメットは店長がよく使っているものだ。 昨日、ヘルメットを借りてかぶろうとした時、それまで思いもよらなかったことに気づいた。 それは、ちょうど頭が当たる部分に、店長の整髪料がべっとりと付いていたのだ。 触ってみると、ぬるっとする。 『こんなのかぶれんわい』と思ってはみたものの、ヘルメットはそれ一つしかない。 『しかたない、家に帰ってから洗おう』と思い、それを使うことにした。 しかし、床屋に行ったときもそうだが、整髪料の臭いというのは、洗ってもなかなか取れるものではない。 しかもぼくは整髪料をつけないので、結構長く臭いが残るのだ。 ということは、ぼくはしばらく店長の臭いと過ごさなければならない。 案の定だった。 家に帰って何度も何度も洗ったにもかかわらず、講習中はずっと店長の臭いがしていた。
さて、本題の講習の方だが、もう散々だった。 三度練習したのだが、最初の二度は脱輪してしまった。 コースの道幅が狭かったということもあるが、教官がいちいち文句を言うのだ。 「ほーら、脱輪したやろうが。おまえは失格ぞ」とか、「そんな運転したら落ちるぞ」とか、熱血漢先生は、容赦なく罵声を浴びせる。 それがプレッシャーになってしまったわけだ。
しかし、原因はそれだけではない。 店にあるフォークリフトと、試験用のフォークリフトは、ギアとサイドブレーキの位置が違うのだ。 店にあるヤツはどちらも左についている。 ところが、試験用は右についているのだ。 つまり、突然外車に乗せられたようなものだ。 しかも、これまでの練習ではずっと右手でハンドルを切っていたのだが、試験では左手でやらないと減点になるというのだ。
ということで、明日は左手ハンドルの猛特訓をしなければならない。 明後日が本番である。
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