先日、会社に行く途中に、車のブレーキを踏んだ時、ブレーキが「キーキー」と鳴いたあとに、「ブーン」という鈍い音が聞こえた。 「キーキー」音は以前からあったが、そのあとの「ブーン」音は初めてである。 最初は別に気にはならなかったのだが、だんだんその音が大きくなっているように思えてきた。 虫歯と同じで、このままで放っておいたら、後日大変なことになるかもしれない。 そう思ったぼくは、会社に着いてから、さっそく知り合いの修理屋さんに電話をかけてみた。 「ブレーキがおかしいみたいなんですけど」 「どういう状態?」 ぼくは、上記のことを説明し、「明日か明後日でいいですから、来てもらえませんか?」と言った。 「いや、ブレーキやけ、すぐにでも修理せないけん。今日行きますから」 「そうですか、じゃあ、お願いします」 ということで、2時間後に、修理屋さんはやってきた。
「ああ、ブレーキパッドが薄くなっとるねえ」 「8月まで、何とか持ちませんかねえ」 「まあ、この状態やったら今日明日でどうかなるわけじゃないけど、何せブレーキやけねえ。出来るだけ早くやったほうがいいよ」
ぼくが修理を渋ったのにはわけがある。 今、急に「はい、修理です」と言われても、お金がないのだ。 なぜ8月まで持たないかと言ったのかというと、実は8月に車検を受けなければならないのだ。 それはあらかじめわかっていたことだから、そのための貯金をしている。 その貯金はちょうど8月に満期になる。 だから、その時まで延ばしたかったわけだ。 それと、車検と絡めれば、修理代も少しは安くあがるだろうと思った、ということもある。 だが、「早めにやったほうがいい」と言うなら仕方がない。 ぼくは渋々ブレーキパッドの取り替えに応じた。 「せっかく修理するんやけ、スモールランプとブレーキランプを替えとって下さい。あとオイル交換もお願いします」
ということで、ぼくは日にちを指定して、修理屋さんに会社まで車を取りに来てもらった。 数時間後、車は戻ってきた。 「もう大丈夫と思うけ」 と、修理屋さんは、今回の修理内容を細かく説明した。 しかし、車のことに疎いぼくは、何を言っているのかがわからなかった。
ぼくの関心事は、ただ一点だった。 「で、いくらかかったんですか?」 「1万5千円」 「1万…、5千円…」 安くしてくれたし、車の修理代としては、このくらいは普通だろうとは思う。 とは思うが、払うとなるとこの額はきつい。 しかも給料前である。 『これがあれば、ステレオ購入の頭金になる』 そう思いながら、ぼくは渋々お金を払ったのだった。
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