頑張る40代!plus

2005年05月22日(日) おじちゃん(後)

姪にとってぼくの存在は、物心ついた時から『しんにいちゃん』だったのだ。
さすがに意地の悪い友人も、ぼくと姪の鉄壁な『しんにいちゃん』関係にあてられたことだろう。
ところで、その友人のことを姪が何と呼んでいたかというと、「おじちゃん」だった。
「へえ、おじちゃんは、うちのパパと同い年なんですか?へえ…」といった具合だ。
その都度友人は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた
「ザマーミロ」、である。

ところで、高校1年時の夏休み以外にも、ぼくはショックを受けたことがある。
それは、再び「おじちゃん」と呼ばれたことではない。
もっと先を行っていたのだ。

5年ほど前だったろうか。
仕事中にそれは起こった。
いつものように、ぼくは暇をもてあましてテレビを見ていた。
すると、やはり2,3歳くらいの、今度は男の子が、ぼくの方にトコトコと歩いてきた。
そしてぼくの前で立ち止まった。

ここまでは横須賀事件と同じである。
しかし、横須賀事件と違ったのは、その男の子がぼくに対して発した言葉だった。
先に言ったように、「おじちゃん」ではない。
当時ぼくは、すでに40歳を超えていたので、仮に「おじちゃん」と呼ばれても、もう驚きはしない。
「ああ、そんな言い方をするガキもいるだろう」と思って、軽く受け流すだろう。
そういうわけだから、もちろんショックなんて受けない。
では、何という言葉でショックを受けたのかというと、それは、「パパ」である。
「パパ」
瞬間、ぼくの中で、時間が止まった。

呆然としたぼくは、その次の瞬間、自然にこの言葉が口をついて出た。
「あんた、誰…?」
そのやりとりを聞いていたのか、その子の母親が慌てて飛んできて、「○ちゃん、はい、よーく見て。ね、パパじゃないやろ」と子供を諭し、ぼくの方を向いて、「どうもすいません。すいません」と平謝りに謝った。
そして子供を向こうに連れて行こうとした。
ところが、子供はそこから動こうとしない。
相変わらず「パパ、パパ」と言っているのだ。

結局、母親はその子を抱きかかえて、連れ去っていった。
その時も、母親は「パパは家におるやろ。あの人はね、ここの店の人よ」と言っていた。
しかし、その子供はそれを面白がっているかのように、相変わらず「パパ、パパ」を連発していたのだった。
ぼくは心の中で、「早く向こうに行け」と思っていた。
まさに『パパと呼ばないで』である。


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