2005年05月14日(土) |
ナンセンスクレーム(その3) |
実家は同じ町内にあるから、車だとすぐに着いてしまう。 それゆえに、実家に行くのに格好を気にしたりはしない。 ぼくは顔も洗わず歯も磨かず、寝間着のまま家を出た。 車を走らせてからすぐに、またもや携帯に電話が入った。 着信音からして、母からだということはわかった。 だが、運転中なので電話に出ることはしなかった。
途中信号待ちなどに逢わなかったので、車のエンジンをかけてから2分少々で実家に着いた。 車を駐車場に置き、そこから実家まで走って行った。 母は掃除機をかけていた。 そのため、ぼくが家に入ったことには気づかなかったようだ。
ぼくは声もかけずに、さっそくテレビのある部屋に行ってみた。 なるほど、テレビはつかない。 ところがである。 母がもう一つつかないと言っていた電話は、ちゃんとついているのだ。 おかしいなと思っているところで、ようやく母はぼくがいるのに気がついた。 母はぼくを見つけると、掃除機のスイッチを切り、手を合わせ「ごめん」と言った。 「え?」 「さっき、この部屋を掃除しよった時に、コンセントを抜いてしまったみたいなんよ。気がついてすぐに電話したけど、あんたが出らんかったけ…」
実家にはコンセントが少ないので、テレビと電話はいっしょのテーブルタップで取っている。 母はどうもそのテーブルタップの元を引き抜いたらしい。 「でも、テレビがついてないやん」 「そうなんよ。何でかねえ?」 とテレビを見てみると、どうも動かした形跡がある。 ぼくが「テレビ動かした?」と聞いてみると、母は「うん。さっきそこ掃除機かけたけねえ」と言った。 「これもコンセントが外れとるんやないんね」 そう言ってぼくは、もう一度テレビを動かしてみた。
案の定そうだった。 テーブルタップにささっているはずのテレビのコンセントは、見事に外れていたのだ。 「外れとるやん」 「何でかねえ?」 「こちらが聞きたいよ。テレビのコンセントは、ちょっと引っ張ったくらいでは外れん。手で外さんかぎり無理なんやけど」 「ああ、そういえば、そこ掃除する時に外したんやった」 「あのー、それはおれに電話する前のこと?」 「うん」 「‥‥」
やはり母が引きつった声で電話してくると、ろくなことはない。 要はコンセントが外れていただけのことで、テレビにいたっては、自分で外していたのだ。 貴重な睡眠時間を、母の大ボケで台無しにしてしまった。 母は悪いと思ったのか、「コーヒー飲む?」とか「ロールケーキ食べる?」などと言って、ぼくに機嫌を取っていた。 しかし、そういうことよりも寝るのが先決である。 そう言っていったんは断ったのだが、目の前にコーヒーとロールケーキを出されると、ぼくの手は自然にそれらを口に運んでいった。 その後、家に戻って寝ようとした。 ところが、実家で飲んだコーヒーが効いたのか、なかなか寝付けない。 そうこうしているうちに、歯医者の時間になってしまった。 結局、その日もぼくは睡眠不足を解消出来なかったのだった。
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