2005年05月12日(木) |
ナンセンスクレーム(その1) |
先月中旬のことだった。 その日の朝方にテレビのリモコンを買ったお客さんから、「さっきリモコンを買った者だが、おたくは不良品を売りつけるんか!」と怒鳴って電話がかかってきた。 そこでぼくは、「電池は新しいのをお使いでしょうか?」とか「リモコンモードは間違ってないですか?」とかいろいろと質問してみた。 しかし、お客さんは「不良品」の一点張りで、ぼくの質問には答えようとしない。 挙げ句の果てに、「責任者呼べ」「もうお前んとこで買えん!」などと言い出した。 電話じゃ埒があかないので、ぼくは「電話ではよくわかりませんから、今から見に行きます」と言い、お客さんの住所と名前を聞き出して電話を切った。
お客さんの家に着くと、お客さんは玄関先で待っていた。 そしてぼくの顔を見るなり、「不良品を売りつけやがって。消費生活センターに言うぞ」などと悪態をついた。 玄関先で文句を言われてもことは解決しないので、とりあえず家の中に入れてもらい、リモコンを見てみることにした。
なるほど、お客さんの言うとおりテレビはつかない。 「ほら見ろ、不良品やろうが」と、お客さんは勝ち誇ったように言った。 そこでぼくは、持ってきた新しい電池を入れてみることにした。 ぼくが新しい電池をポケットから取り出したのを見て、お客さんは「おまえはバカか。電池を入れ替えてもいっしょやろうが。元々不良品なんやけ」と言った。 ぼくが「やってみらんとわからんでしょ?」と言うと、お客さんは「直るわけないやないか。まあいい。やってみたら不良品ということがわかるやろ」と言った。 「じゃあ、やってみます」と言って、ぼくはリモコンの電池カバーを外した。 「‥‥」 「ほら見てみ、やっぱり不良やろうが」 「お客さん、電池はどうしました?」 「えっ、電池?」 「ええ、電池です」 「電池は入っとるやろうが」 「いいえ、入ってないですよ」 そう言って、ぼくはリモコンをお客さんに見せた。 「そんなはずはない。ちゃんと入れたぞ」 「でも、入ってないですよ」 「おかしいなあ」 「これじゃつきませんよね」 「・・・」
電池を入れてみると、リモコンは正常に作動した。 それを見ても、お客さんは「おかしいなあ。確かに入れたんだがなあ」を連発するばかりだった。 最後は「今から出かけないけん」と言って、ぼくを追い返した。 それまでの悪態に対する謝罪は、一切なしだ。 まあ、この手のお客さんは、そういう人が多いから、別段腹も立たなかった。 それよりもぼくは、「お客さんは、いったいどのリモコンに電池を入れたのだろうか?」ということが気になっていた。 家の中には、他にリモコンはなかったような気がする。
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