【1】 ゴールデンウィークのような大型連休になると、人はどうしても広域集客型のデパートや、大型量販店に集まる傾向にある。 そのため、ぼくが勤めている会社ような、地域密着型の店舗というのは、どんな大きなイベントをやろうともなかなか人は集まってこない。 どうかすると、平日よりも客の入りが悪いことさえある。 それに加えて、日祭日はどこの取引先も休みだから、荷もあまり入ってこない。 しかもゴールデンウィークのための準備は出来ている。 ということで、この時期はあまりやることがない。
そのくせ日祭日なので従業員は多く出勤してきている。 そのため、ちょっと時間を食いそうな仕事でもすぐに終わってしまう。 そうなると当然暇な時間が出来てくる。 まあ、パートさんはほとんどが4時間勤務なので、あまり暇な時間というのはないだろうが、長時間拘束されているぼくたち社員は、所々に暇が出来る。
そこで、どうやってその暇な時間を潰すかが問題になってくる。 忙しい時間というのはさっさと過ぎ去っていく。 ところが、暇な時間はなかなか過ぎないものである。 暇なら暇でよさそうなものであるが、これが苦痛なのだ。 地獄にいるように感じられることすらある。 ということで、暇という地獄に耐え、乗り切るることも、我々社員に課せられた仕事の一つだと言える。
【2】 今日は昼から暇になり、さて何をしようかと思っているところで、オリックスvsソフトバンクの中継が始まった。 ということで、今日の暇地獄はその観戦で乗り切ることにした。
さて、わがホークスは、前節のロッテで3連敗を喫したものの、一昨日からオリックスに連勝している。 今日もいいペースで試合は進んでいた。 相変わらずお客さんが少ないので、テレビはぼくが独占していた。 ところが、ホークスが点を入れ始めた頃、二人の婆さんがカートを押してやってきた。 どちらも70歳を過ぎているように見えた。 何か商品を探しているのだろうと見ていると、婆さんたちはテレビがあることに気づき、、ぼくの目の前を行ったり来たりしだした。 時折そこで立ち止まり、二人で会話をしている。 その会話というのが、婆さんに似つかわしくない内容なのだ。 「このテレビは映りがいいけど、ブラウン管か。今は液晶の時代のにねえ」だとか、「DVDの時代だからもうビデオは流行らん」などと言っているのだ。 他にも話の途中にITだのインターネットという言葉が出てきた。
しばらくそのへんをウロウロしていたが、その後再びテレビのところにやってきた。 「今日はテレビで野球をやっとるんやねえ」 「ああ、よかった。ソフトバンクは勝っとる」 「6-0か。今日も勝つやろうね」 「そういや、今どこかのチームがずっと勝っとるらしいね」 「ロッテやろ」 「そうそう、ロッテ、ロッテ」 「何であそこは負けんのかねえ?」 「ホント胸くそ悪いねえ」 「もうロッテの商品は買うまいや」 さすが、地域密着型チームである。 こんな野球に縁のなさそうな婆さんたちまで応援しているのだ。
しかし、「もうロッテの商品は買うまいや」には笑ってしまった。 もし、他のチームの調子が良かったら、婆さんたちはどうするのだろうか。 きっと日ハムなら「もう、ハム食べまいや」となり、西武なら「モールに行くのはやめようや」となるだろう。 それならオリックスや楽天の場合、どうなるのだろうか? 「もうオリックスで金借りまいや」とか「楽天で物は買えんなあ」となるのだろうか?
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