さて、アルバイトが終わった後も、成人の日まで、ぼくはKさんと頻繁に会っていた。 それ以降はというと、Kさんも卒業や就職の関係で、あまり動きが取れなくなったのか、会うことがなくなった。 成人の日から数日して、Kさんから「赴任先が広島に決まった」と電話が入った。 Kさんはすでに某運送会社に就職が決まっていたのだが、赴任先がどこになるのかまだ決まっていなかったのだ。 この電話をもらう前に、先方から連絡があったらしかった。 「これから卒業とか引っ越しでいろいろ忙しくなるけ、もう会えんかもしれんけど、まあ、おまえも頑張れや。落ち着いたら連絡するけ」 「うん」 が、連絡はなかった。 ということで、この電話が東京に出る前にぼくがKさんと交わした、最後の会話であった。
その年の8月だった。 東京から帰省していたぼくは、Oさんたちから、Kさんが盆休みで戻ってきているということを聞いた。 「じゃあ、久しぶりでみんなで会いましょうか」ということになって、ぼくが代表してKさんに電話することになった。 「あ、Kさんですか?」 「はい」 「しんたです。お久しぶりです」 「しんた…。しんた…?誰やったかのう」 「しんたですよ。Y運送でいっしょだった」 「おお、あのしんたか!」 「忘れたんですか?」 「忘れるわけないやないか。いや、最近、営業やっとるもんで、いろいろな人に会うやろ。そのせいで急に昔の知り合いの名前を言われてもピンと来んようになったっちゃの。で、何の用か?」 「今、Oさんたちといっしょにいるんですが、会えませんか?」 「今からか?」 「ええ」 「今はちょっと都合が悪いのう。明日の夜ならいいけど」 ということで、翌日にぼくたちは会うことになった。
そこでいろいろと、各人の近況報告など話したのだが、その時再会したことがきっかけとなって、KさんとOさんはつき合うことになった。 もちろん、遠距離恋愛である。 翌年だったか、噂で二人が結婚することを聞き、「Kさんよかったな」と思ったものだった。 しかし、二人は結婚しなかった。
ぼくが東京から北九州に戻ってきた80年のことだった。 その年の春、ぼくはUさんの紹介で日立にアルバイトで採用され、長崎屋に勤務することになった。 そういうことがあって、Uさんと会うことが多くなった。 Uさんは、自分が好きな人の目を引かせるために、ぼくを当て馬に使ったこともあった。 Uさんは、結局その人と、その年の11月に結婚するのだが、その結婚式にはぼくやOさんも呼ばれた。 だが、そこにKさんの姿はなかった。
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