頑張る40代!plus

2005年01月26日(水) 上京前夜(19)

その年の9月のことだった。
ぼくは8月中旬に一端長崎屋を辞め、その時期は博多の出版社で働いていた。
仕事から戻ると、母が「さっきUさんという人から電話があったよ」と言う。
「何の用やった?」
「さあ?何も言わんかったけど、急いどるみたいやったよ。電話してみたら?」
「うん。わかった」

ぼくはさっそくUさんに電話をかけた。
「もしもし、しんたですけど」
「ああ…、しんた君」
Uさんの声は沈んでいた。
「どうしたんですか?」
「あのう…、Kさんが…」
「えっ?」
「Kさんが死んだんよ」
「えーっ!?うそやろ?」
「さっき、Oさんから電話があってね…」
「何でまた…。事故か何かで?」
「いや、ガンらしいよ」
「えっ、ガン?どこの?」
「胃ガンらしいんよ」
「ああ…」

ぼくには思い当たる節があった。
Kさんはめっぽう酒の強い人だった。
バイトしていた時に、「昨日はボトル2本空けた」などとケロッとした顔をして言っていた。
普通ボトル2本も空ければ、そんなケロッとした顔をして会社になんか来られないはずである。
聞くところによると、飲み比べをして、一度も負けたことがないらしい。
それもそのはずだった。
Kさんは酔えない体質の人だったのだ。
そのため、限度がわからずに、時間が許す限り飲んでしまう。
社会に出て、いろいろとストレスを溜めては酒を飲む、といった生活をしていたのだろう。
それで胃を痛めたのだろう。
Uさんの話によると、最後の一ヶ月は食事も受け付けない状態で、死ぬ前はかなりやせ細っていたと言う。

Uさんは続けた。
「今日通夜で、明日葬儀なんやけど。今日はもう遅いけだめやけど、しんた君、明日は行ける?」
ぼくは、翌日から熊本に出張しなければならなかった。
「行きたいけど、明日から出張なんよ」
「ああ、出張か。じゃあ、行けんねえ…。しかたない、Yさんと二人で行ってくる」
「Oさんは?」
「付きっきりやったみたい」
「そう…」
「かなり落ち込んでいるみたいよ」
「そうやろうねえ」

Kさんの家は、博多に行く途中にあった。
いつも電車でそこを通る時、Kさんの家の屋根が見えていた。
翌日、出勤途中に、電車がKさんの家の前を通過した時に、ぼくはKさんの家の方向を向き手を合わせた。
そして、博多に着くまで、あのY運送でバイトした日のことを思い起こしていた。
Y運送に入った日のこと、井筒屋での仕事のこと、Y大生事件のこと、Kさんの家に泊まった日のこと、X子のこと、Oさんのこと、K選手の壮行会のこと、成人の日のこと…。
そういう出来事も、その時にはすでに遠い過去のことになってしまっていた。
だが、Kさんは違っていた。
兄貴という形で、ぼくの中にはっきりと存在していた。
そして、それは今でもそうである。


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