打ち上げが終わり、その数日後にバイトは解散になった。 ぼくはこのバイトで、仕事の難しさよりも、人付き合いの難しさを知った。 たったひと月半だったが、その短い期間にいろいろな事件があった。 何気ない言葉で袋だたきに遭わされそうになったり、はっきりした態度を取らなかったためにだめになったX子のこともあった。 もちろん、Oさんとのことも。 そのつど反省することも多かった。 とくに、Kさんのようなタイプの人とつき合うのは初めてだった。 そのため、この人とはどういう自分で接すればいいのか、などと考えることもあった。 また、Kさんを見ていると、自分が普通の人ではないように思えてきて、「この先、本当にまともに生きていけるんだろうか」などと思うこともあった。
とはいえ、楽しいひと月半だった。 その後も、しばらくバイト仲間とのつき合いは続いた。 特に覚えているのは、みんなと会うのが最後になった、成人の日のことだ。 そのバイト仲間の中で、その年成人になったのは、ぼくとAという男の二人だった。 正月にKさんに会った時に、「成人の日に、おまえたちのお祝いをしてやる」と言われていたのだ。
その成人の日、成人式に参加しなかったぼくは、午前中に慣れないスーツを着て親戚周りをした。 もちろん、ご祝儀目当てである。 それが終わってから、ぼくはKさんたちが用意してくれたお祝い会場に行った。 お祝い会場と言っても、別に店を借りたわけではない。 Oさんたち女性陣の一人であるYさんという方が、家を開放してくれたのだ。 そのおかげで時間を気にせずに、夜遅くまで飲み食べ語ることが出来たのだった。
宴もたけなわになった頃だった。 KさんがIさんに、「ちょっといいですか?」と声をかけ、別の部屋に連れて行った。 その部屋にはOさんがいたのだ。 KさんはIさんを部屋に入れると、自分は外に出た。
ぼくはKさんに聞いた。 「何がありようと?」 「例の件よ」 「例の件…?」 「告白タイム」 「ああ」
しばらくして戻ってきたOさんは、席に着くなり一気に酒を飲みほした。 それを見たぼくたちは、すべてを悟った。 酔いが回るに連れ、Oさんは「Iさん好きです」を繰り返し口にした。 しかし、どうしようもなかった。 Iさんにはすでに彼女がいたのだった。 どうなるものかと思ったが、さすがにIさんは大人だった。 なるべくOさんが傷つかないような方向に話を持っていった。 それを見ていたKさんは、「ホントこの人はいいカッコしいなんやけ」と言って、Iさんを批難した。 が、当のOさんはIさんの話で吹っ切れたようだった。
その後、祝成人会はお開きとなった。 最後に「またこういう会を開こう」ということになったが、その後、現在に至るまで、その会は開かれていない。 というより、この先も開かれないだろう。 それには理由がある。
|