○日、仕事が終わってから、ぼくたちは打ち上げ会場に集合した。 Kさんはぼくをダシに、Oさんと話している。 「こいつから『Oさんとつき合いたい。Kさん、どうにかならんかねえ』と相談受けたんよ。おれは『年上やけやめとけ』と言うたんやけどね。ちょうどその頃、X子という井筒屋のアルバイトの女子高生が、おれのところに『しんたさんとつき合いたい』と言ってきたんよ。そのことを伝えると、しんたは『おれにはOさんしかおらんけ、X子にそう言うとって』と言う。しかたなく女子高生には断りを入れたんやけど、おれはその子のほうが、しんたにはお似合いだと思った…」 ぼくはそれを聞いて、『何が、しんたにはお似合いだ、だ。全然話が違うやないか』と思っていた。 X子のことは、ぼくが断ったのではない。 Kさんが勝手に断ったのだ。 それも、そのことをぼくに伝える前に。
一方のOさん。 「あの夜ねえ、Yさんと帰っていたら、突然後ろからバシッと肩を叩かれてね。びっくりして顔を見てみたら、しんた君やったんよ。『何か用?』と聞くと、『ねえ、つき合って』やけね。そんな口説き方はないやろ。女の子は、デリケートなんやけ」 それを聞いてKさんは言った。 「えっ、肩をバシッと叩かれたと?」 「うん、痛かったよ」 「そうね、そんなことしたんね。しんたは変っとるけねえ」 そんな二人のやりとりを聞いていて、だんだん面白くなくなってきたぼくは、持ってきたギターを引っ張り出して、歌を歌っていることにした。
ところで、二人のやりとりを見ていて思ったのだが、OさんのKさんに対する態度は、ぼくのそれとはまるで違うものだった。 ぼくと話す時は、やはり年上という意識からなのか、「ああしなさい、こうしなさい」というように命令口調になることが多い。 ところが、Kさんには甘えるような口調で話している。 そういう会話を聞きながら、ぼくは『Oさんは年上のほうが好きなんだろうな』と思った。 そして、『この人たちは、このままつき合っていくんだろうな』と思ったものだった。
ところが、どうもそうではなさそうなのだ。 お酒が回るうちに、Oさんは「Iさん」という名前を口にするようになった。 どうやらOさんは、バイト仲間の一人であるIさんのことが好きらしい。 Kさんも、会話の途中にそのことに気づいたようだった。
IさんはF大の4年生だった。 浪人して大学に入ったのだろうか、歳はKさんより一つ上だった。 背が高く、甘いマスクをしたIさんに、Oさんは前から憧れを持っていたようだった。 Iさんはギターを弾くとかで、ギターをいじっているぼくに、何度も話しかけてきた。 Oさんは、その都度Iさんを目で追っていた。
Kさんといえども、Iさんが相手だとかなわないと思ったのか、急に「おれが仲を取り持ってやろうか」などと言いだした。 そして、宴会の最後には、「おれに任せとき!」と胸を叩いていた。
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