この時、ぼくはあることに気がついた。 ぼくに「好きな人はおるか?」と聞いて以来、それまでまったく出なかったOさんの名前が出るようになったのだ。 もちろん、Kさんは勝手にぼくがOさんのことを好きと思っていたのだから、それも有りだと思っていた。 それなら、ぼくがふられたらそれで終わりになるはずだ。 ところが、その後もなぜか頻繁にOさんの名前が出てくるのだ。 こういう場合、KさんはOさんのことが好きだと思うのが自然だろう。
もしかしたら、Kさんは、ぼくがOさんのことを何とも思ってないのを知っていたのかもしれない。 それでもぼくを焚きつけたのは、Oさんに近づく手段として、ぼくを利用したかったからではないのだろうか。 だから、しつこかったのだ。 Kさんから「まだか、まだか」とせっつかれるたびに、ぼくは何か変だと思ったものである。 が、「しつこいのう」という思いのほうが強かったために、そういうことを突っ込んで考えることが出来なかったのだ。 なるほど、このバイトが終わってしまえば、当然Oさんとのつながりはなくなってしまう。 しかし、自分からは言い出しにくい。 そこでぼくを利用したというわけだ。 Kさんがぼくを利用したという推理が当たっていたのかどうかは知らないが、KさんがOさんを好いていたという推理は正しかったようだ。 数ヶ月後、KさんはOさんとつき合うことになる。
さて、またもやぼくは走らされることになった。 前回と同じく、ぼくはOさんの後を息を切らして追いかけていった。 だが、さすがにこの時は、肩を叩くことはなかった。 Oさんはぼくの顔を見ると、「またか」というような顔をした。 が、ぼくは気にせずに言った。 「もうすぐこのバイト終わるやろ」 「うん」 「それでKさんが、打ち上げを企画しとるんよ」 「ふーん」 「で、Oさんたちも誘おうということになって…」 「いつ?」 「○日」 「○日かあ。私は行けると思うけど、他の人がわからんけ、明日聞いてみるね」 「お願いします」
翌日、Oさんがぼくに「昨日の件、いいよ」と言ってきた。 「こっちはUさんとYさんと私の3人。そうKさんに言っといて」 「わかりました。Kさんに伝えときます」 そしてぼくはKさんにその通り伝えた。 「そうか来るんか…。よくやった。さすが友だちが頼むと違うもんやのう」 「・・・」
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