頑張る40代!plus

2005年01月16日(日) 上京前夜(11)

もうすぐクリスマスというある日。
バイトが終わり、家に帰ろうとした時だった。
Kさんから呼び止められた。
「おい、いいかげんにOさんとカタを付けれ。このままでいいんか?」
「…うん」と、ぼくは気のない返事をした。
実は、ぼくはまだX子のことを悔やんでいたのだ。

そういう事情を知らないKさんには、ぼくに告白する勇気がないように見えたのだろう。
怒ったような、呆れたような口調でこう言った。
「本当におまえはだめやのう。おまえを見とるとイライラする。だめで元々やないか。男ならさっさと『つき合ってくれ』と言ってこい!」
「・・・」
「何ならおれが言うちゃろか?」
「そんなことせんでいい」
「それなら自分で言うてこい」
「…うん」
「いいか、男は押しぞ。押して落ちん女なんかおらん」
「そういうもんかねえ」
「おう。おれはいつもそうしてきた」
「ふーん」
「じゃあ、今日ちゃんと言えよ」
「・・・」
「明日、報告を待っとるけの」
「・・・」
「わかったか!」
「…うん」

後年、人にこの時の話をしたことがある。
それを聞いた人は、みな一様に「Kさんは後輩思いのいい人やったんやね」と言ったものだ。
確かに、Kさんは後輩思いのいい人だった。
しかし、それだけでぼくを焚きつけたのではなかった。
他に理由があったのだ。
しかし、その理由は、その時のぼくにはわからなかった。
おそらく、Kさんにもその理由はわからなかっただろう。
本人がわからないというのも変な話であるが、きっとわかっていなかったに違いない。
それは、Kさんの運命に関わりのあることだったからである。
そのことは、後で触れることになるだろう。

さて、困ったことになった。
Kさんに「うん」と言った手前、その日に言わなければならなくなった。
Oさんは、ぼくがKさんに捕まっている時に、会社を出ていた。
ぼくが会社を出ると、Oさんは遙か向こうを歩いていた。
人影がもう一つ見える。
おそらく、事務で働いている他の女性と帰っているのだろう。
ぼくは、どうしようかと迷った。
いっそ、「見失った」とKさんに報告しようかとも思った。
しかし、道は一本道である。
見失うはずがないのは、Kさんもよく知っている。
「どうしようか…」

しかし、言わないと、またKさんのしつこい攻撃が始まる。
いろいろ考えたあげく、一つの結論に達した。
それは、「ふられよう」ということだった。
元々、それほど好きでもなく、ましてやつき合いたいとも思ってなかったのだから、ふられたとしても、痛くも痒くもない。
相手には、ただの変な人と思わせておけばいいのだ。
その結論に達して、ぼくは気が楽になった。


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