その運送会社にはかなりの数のアルバイトがいたが、その中で特に仲が良かったバイト仲間が5人いた。 もちろん上記のKさんも入っていた。 この5人とはよく飲みに行ったものだった。 仕事が終わると、街に繰り出す。 店が閉店になっても飲み足らず、Kさんの家に行ってはまた飲み直す。 バイトの後半は、そんな生活が続いていた。 そのうちに事務所で勤務しいている女性3人とも仲良くなり、その後頻繁にホームパーティなどを開くことになるのだが、そのきっかけを作ったのはぼくだった。
その女性の中に、Oさんというきれいな人がいた。 ぼくはその人に、ほのかな憧れを抱いていた。 が、好き、というほどでもなかった。 ある日、Kさんから「しんた、おまえ好きな人はおるんか?」と聞かれた。 「高校時代から、ずっと好きな人がおるよ」 「つきあいよるんか?」 「いや」 「じゃあ、片想いか?」 「まあ、そんなところやね」 「他におらんとか?例えばY運送の中の人とか」 「Y運送の中なら…、Oさんかねぇ」 「Oさん?ああ、あの事務の人か」 「うん」 「どこがいいんか?」 「どこがと言われても…。まあ、全体の雰囲気やね」 「そうか」 「ところであの人いくつなんかねえ?おれとあんまり変らんようやけど」 「さあ、知らん。今度聞いとってやろうか」 「お願いします」
それからしばらくして、Kさんが「Oさんの歳がわかったぞ」と言ってきた。 「いくつなん?」 「おまえよか一つ上らしい」 「そうなん」 「喜べ」 「え?」 「今、彼氏はおらんらしいぞ」 「ふーん」 「好きならつきあえ」 「いや、別に好きというわけじゃない」 「この間、好きと言ったやないか」 「好きとは言ってないよ」 「いや、そんなことはない。口に出さんでも、おれにはよくわかった」 「はあ?」 「こういうことは、はっきりさせといたほうがいい。だめならだめで、早いうちのほうが傷つかんですむ」 「・・・」 「いいか、今日の夜、告白してこい」 「あ?」 「早いほうがいいと言ったやろ」 「いや、今日は…」 「今日はだめなんか。じゃあ、いつ言うんか?」 「いつと言われても…」
ぼくは早くこの話から抜け出したかった。 だが、Kさんはなかなか終わってくれそうにない。 そこで、「わかった。じゃあ近いうちに言うけ」と言ってその場を逃れることにした。 「そうか。じゃあ、結果をちゃんと報告せよ」 そう言うと、Kさんはようやくその話を終えた。
ぼくはホッとした。 そして、「ああは言ったものの、時間を長引かせれば、そのうちKさんも忘れるだろう」と思っていた。 ところが、Kさんはなぜかしつこかった。 ことあるたびに、「おい、告白したか?」と聞いてくるのだ。
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