午後2時過ぎだった。 ぼくが荷出しをしていると、突然「ズン!」という鈍い音がして、腹を突き上げられるような衝撃が走った。 ぼくの脳裏にひとつの言葉が浮かんだ。 『地震』 すぐさまぼくは、近くいたパートさんを捕まえて、「ねえ、今、地震があったやろ?」と聞いた。 するとパートさんは、「えっ、全然揺れてないよ。何かと勘違いしたんやないと?」と言った。 『いや、そんなことはない、あれは絶対地震だ』と思ったぼくは、大勢人がいる化粧品売場に確認しに行った。 「ねえ、今、地震があったやろ?」 ところが、化粧品売場にいた美容部員たちは、「地震なんてないですよぉ。しんたさん居眠りでもしてて、寝ぼけてたんじゃないんですか?」と言って笑った。
ぼくはその後も何人かの人に聞いて回ったのだが、「揺れてないよ」とか、「店が老朽化して、揺れたんかねえ」とか、「どこかで事故でもあったんやないんね」とか言って、誰も相手にしてくれなかった。
『こうなりゃテレビの地震速報だ』と思い、ぼくはテレビのあるところに行った。 ところが、どのチャンネルも地震速報なんて流していない。 『やっぱり、地震じゃなかったんかなあ?でも、おれは寝ぼけてなんかいなかったぞ』 そう思った時だった。 携帯の着信音が鳴ったのだ。
しかし、それはニュース速報の着信音として設定している音ではなかった。 普通のメール用に設定している、単純な「リーン、リーン」という音だった。 こんな忙しい時に何だろう、と思いながらメールを開いてみると、何とそこには『各地の地震情報』という文字があるではないか。 『やっぱり地震やった』 そう思ってメールを読んでみると、今回の地震の震源地は福岡県福岡地方で、津波の心配はないということだった。 さらに、最大の震度は2で、筑豊地方がその震度2を味わった地域になっていた。 『ところで、北九州地方はどうなっているんだ?』 と見てみると、震度1のところに八幡西区の文字が見えた。
そのメールを何度か読み直して、地震があったのは間違いないと確信してから、先の化粧品売場に行った。 そして、そこにいた美容部員を捕まえて、 「やっぱり地震やったぞ」と言った。 「えっ、そうだったんですか。何も感じんかったけ、てっきりしんたさんが寝ぼけているんだと思ってた」 「アホか。どっちが寝ぼけとるんか。便所に行って顔洗ってこい!!」 それからぼくは、地震があったことを、会う人会う人に言って回った。
しかし、たった2センチの積雪で交通渋滞に陥ったり、こちらにほとんど影響のなさそうな台風で学校を休校したり、と何かと大げさな県民性であるがゆえに、震度2程度の地震でも大騒ぎになると思っていた。 ところが、ぼくが「あの衝撃はすごかった。何せ、縦揺れだったんだから」と言っても、出てくる言葉は「へえ」だけだし、「今まであんな地震に遭ったことがない」と言っても、「そうなん」と軽く流すだけである。
それは、何もぼくの回りだけではない。 テレビのローカルワイドでも、ちょっと地震に触れた程度で、ほとんど感心がないようだった。 それよりも、隣の晩ご飯や、お料理コーナーのほうが大切なのだろう。
結局、地震で大騒ぎしていたのは、ぼく一人だったわけだ。 つまらん。
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