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2004年12月14日(火) 夫婦生活

2,3日前のことだが、朝ぼくがパソコンでニュースを見ていると、嫁ブーが「目の下が腫れてない?」と言って部屋に入ってきた。
見てみると、なるほど目の下が腫れている。
「おう、腫れとるのう。どうしたんか?」
「心当たりがないんよ」
「食うちゃ寝、食うちゃ寝しよるけ、そうなるんたい」
「いや、それは違うと思うけど…」
「大いにある」
「もう…。ねえ、どうしたらいいかねえ?」
「この間、おれが買った目薬があったやろ?あれ差してみ。けっこう効くぞ」
「ああ、あったねえ。それ差してみよう」
そう言って、嫁ブーは部屋を出て行った。
しかし、向かった先は、目薬を入れてある冷蔵庫ではなく、トイレだった。
相変わらず緊張感のない女である。

しばらくして、嫁ブーはトイレから出てきた。
そして、冷蔵庫の所に行き、目薬を取り出してきた。
「これやったよねえ?」
「二つあったやろ?」
「うん」
「抗菌と書いてある方」
「ああ、これでいいんやね」
そう言うと、嫁ブーは目薬を差しだした。
その姿を見て、ぼくはおかしくてたまらなかった。
目薬を差す時、どうして口を開けるのだろう。
これも牛乳を飲む時に腰に手を当てる動作と同じで、バランスをとるためだろうか?
口を開けていたほうが上を向きやすいのは確かだが、その姿を端で見ると滑稽なものである。

嫁ブーが目薬を差し終わった後に、ぼくは言った。
「いいか、目が治るまで、おれに触るなよ」
「え、何で?」
「うつるやないか。ただでさえ歯が悪いのに、これ以上悪いところが出来たら困るわい」
「うつらんっちゃ」
「そんなことわかるか。とにかく触るな」
ぼくがそう言うと、嫁ブーはわざとぼくのそばに寄ってきた。
「こっちに来るな。向こう行け」と言って、ぼくは嫁ブーを部屋から追い出した。

その後、会社に着いてから、左目に違和感を感じた。
何となくだるいのだ。
「やっぱり、うつったやないか」
このまま放っておいたら、眼医者行きである。
嫌々歯医者に行っているのに、この上眼医者になんかに行きたくはない。
そこでさっそく目薬である。
だが、その日は目薬を買うほどのお金を持っていなかった。
「そういえば…」
ロッカーに目薬を置いているのを思い出した。

ぼくはさっそくロッカーに行った。
「あった!」
前に目が悪くなった時に買ったもので、ちゃんと箱に入ったままであった。
その箱を見ると、まだ有効期限内である。
「これでいいや」
そう思って、その目薬を差すことにした。

休憩室に行き、手を洗ってから目薬のふたを開けた。
その時、朝の嫁ブーの姿を思い出した。
口を開けて目薬を差していると、笑われること必至である。
そこでぼくは、口を開かずに目薬を差すことにした。
しかし、口を閉じたままだと、上を向きにくい。
幸いそこに人はいなかったので、大きな口を開けて目薬を差すことにした。
ほどなく、目の違和感はなくなった。

夜、嫁ブーを迎えに行った。
嫁ブーが車に乗り込んだ時に、ぼくは言った。
「おかげで、えらい目にあったわい」
「え?」
「うつったんよ」
「目?」
「おう。でもすぐ治ったけど。で、おまえはどうなんか?」
「治ってない」
「おまえ、会社で目薬差したんか?」
「持って行くの忘れたんよ」
「アホか。後ろに座れ」
「何で?」
「またうつるやないか」
「大丈夫っちゃ」
「大丈夫やないけ、うつったんやろ」
「・・・」

家に帰ってから、嫁ブーはまた口を開けて目薬を差していた。
朝と同じく、間抜けな顔をしていた。
その日、ぼくは嫁ブーからなるべく遠ざかっていた。
寝る時も、普段より50センチばかり離れて寝た。
おかげで、何とかうつらなくてすんだ。
一方の嫁ブーは、口を開けた甲斐あって、翌朝は少し腫れが引いていたようで、その日の夜には完治していた。


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