| 2004年12月07日(火) |
歯医者の思い出(上) |
歯を抜いてから3日たった。 抜いたあとしばらく続いていた歯茎の腫れも、何とか治まっていっているように感じる。 痛みはというと、抜いている時からさほど痛くはなかったが、今もその状態が続いている。 とはいうものの、まだ気持ち悪いのは確かだ。 抜いたあとを舌で触ると、フニャフニャして何か安定に欠ける。 歯を抜く時、器具で歯茎が傷ついたのだが、そこもまだ治ってない。
さて、今日は歯医者通いの日だった。 まだ三度しか行ってないのだが、なぜかそこがホームグラウンドのような気がする。 いつものようにドアを開けると、ほどなく看護婦が出てくる。 すでに相手もぼくの顔を覚えたようで、ぼくが通院カードを出す前にすばやくカルテを用意する。 手続きをすますと、「じゃあ、しばらくお待ち下さい」と言って看護婦は奥に引っ込み、ぼくはいすに座って待合室の書棚にある『ブラックジャック』なんかを読んでいる。 何か、こういう風景が、ずっと前から続いているように思えるのも不思議である。
16年前に右上の親知らずを抜いた時は、こんな落ち着いたものではなかった。 先日も書いたが、それはちょうど『左遷』の時期だった。 ある日、急に親知らずが痛み出した。 それまでも何度か痛みがあったが、さほど気にはならなかった。 だが、その時の痛みは違った。 息をするだけでも痛いのだ。 それが一晩続いたので、ぼくは観念して、翌朝会社に着くなり、すぐに歯医者に行くことにした。
そこで困ったのが、どの歯医者に行くかということだった。 会社の近くには、三つの歯医者があった。 そのうち二つはすでに行ったことがあった。 一つはろくな歯医者ではなかった。 「はーい、大きなお口を開けてー」 「はーい、クチュクチュしてー」 どう見ても、ぼくよりも年下の看護婦が、まるで子供に言うように指図するのだ。 かと思えば、治療している最中に、 「ねえ、しんたさん。わたしねー、離婚しようと思ってるんだけど、どう思う?」などと言って、身の上相談を持ちかけてくる看護婦もいる。 治療が終わって数日してから、今度は後輩がそこに通い出した。 ぼくがその後輩に、 「あの歯医者、変やろ」と言うと、 後輩は、 「ホント、変ってますね。でも、あの看護婦たちは、『しんたさんって、変ってますね』と言ってましたよ」と言った。 やはり変な歯医者である。
もう一つの歯医者は、看護婦はまともだったが、治療の時間が非常に長い。 そこに通っていた時に、初めて奥歯を抜いたのだが、その時は何と3時間もかかってしまった。 そのため何度も麻酔が切れて、痛い思いをしたものだった。 その間、先生は「痛ければ右手をあげて下さい」と言っていたが、ぼくが痛くて右手をあげても、「そうですか。痛いですか」と言いながらも、その手もゆるめなかった。
「さて、どこに行こうか」と思ったが、その二つにはもう行きたくなかった。 そこで、自ずと残った一つがクローズアップされてくる。 「やっぱり、あそこしかない」 そう思って、ぼくはもう一つの歯医者に向かった。
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