頑張る40代!plus

2004年11月25日(木) 左遷(6)

それから数日たった、ある日の朝のことだった。
配達業者の社長がぼくに声をかけてきた。
「今、時間空いとるかねえ?」
「ええ」
「じゃあ、ちょっとつきあってくれん?」
特にすることもなかったので、ぼくは「いいですよ」と答え、社長について行った。

社長は店の近くにある喫茶店に入っていった。
そして席に着くなり言った。
「大変そうやね」
「ええ、まあ」
「ぼくが思うに、今の店長はあんたのことを誤解しているようだ。ぼくの周りの人間は、今回の人事を聞いた時に、みんな首をひねったもんねえ」
「誤解してるんですかねえ。まあ、嫌われているのは確かですけど」
「いや、それは誤解から来てると思うよ」
「そうですかねえ」
「で、ちょっとぼくに任せてくれんね」
「え?」
「店長に、あんたを正しく評価してもらえるように仕向けるけ。だからもう少し我慢しとき。みんなあんたの味方なんやけ」
その日、テナントの社長にも同じようなことを言われた。

また、ある時のこと。
仕事が終わって店を出ようとすると、同僚が駆け寄ってきた。
「しんちゃん、わかったよ」
「何が?」
「あんたの噂を流した奴」
「え?」
例のスパイのことだ。
「あいつとあいつ。おれ事務所で発注しよる時に、店長にチクりようの聞いたもんね」
「そうね」
「でもね、その噂も誤解だったとわかったみたいよ」
ぼくはそれを聞いて、配達業者の社長やテナントの社長の言ったことを思い出した。
あの人たちがいろいろと手を尽くしてくれていたのだ。
ぼくはすべてが好転しているように思えた。

2ヶ月目も終わりの頃だった。
店長が閉店後、外販部隊を集めた。
そして、
「いろいろ君たちに頑張ってもらっているけど、今、肝心の店のほうの人員が足りない状況にある。翌月からは大切なキャンペーンも始まることだし、このままだと大変なことになってしまう。そこで、君たちを元の部署に復帰させたいと思っている」
と言った。
これで2ヶ月に渡った、外販部隊という名の見せしめが終わった。ぼくはそう思っていた。
しかし、そうではなかった。
店長のぼくに対する執拗な攻撃は、まだ続いていたのだった。

翌日、内示があった。
前日の話では、メンバーは元の部署に戻されるはずだった。
ぼくより先に呼ばれたメンバーは、みな元の部署に戻るように言われたようだった。
店長は最後にぼくを呼んだ。
「しんた、昨日元の部署に戻すように言ったけど、おまえには他の部署でやってもらうことにした」
「え?」
「いろんな人がおまえを優秀と言ってくるけのう。元の部署じゃ物足りんやろう」
「そんなことはありません。前の部署で充分です」
「いや、そんな優秀な人間を、楽器売場みたいな小さな部門に置いといては、店にとっても大きな損失になる。そこで、おまえにはもっと大きな部門に行ってもらって、その優秀さを発揮してもらう」
明らかに皮肉だった。


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