頑張る40代!plus

2004年11月23日(火) 左遷(4)

さて、突然「外に行って売ってこい」などと言われても、売れるものではない。
それ以前に行く所がない。
仕方なく、知り合いに片っ端から電話をかけてみた。
「あ、しんたです。お世話になってます。実は…」
ぼくは事情を話し、誰か電化製品を買う人はいないか聞いてみた。
しかし、どの人も、
「うん、事情はわかった。しんたさんにはいつもお世話になっているから、力になってやるよ」
と同情して、協力するとは言ってくれるけれど、最後に必ず、
「だけど今日買う人はおらんかと言われてもねえ…」
という言葉が返ってきた。

ぼくは意地になっていた。
とにかく、店長を見返してやりたかったのだ。
それが初っぱなからこんなことでは、あの店長から嫌みを言われ悔しい思いをするのは目に見えている。
そういうわけで、気がつけば母の知り合いにまで電話をかけていた。
そして何とか、一台目の売り上げを作った。

それは冷蔵庫だった。
母の知り合いに電話をかけた時に、「知り合いで冷蔵庫を買い換えようという人」という情報を得たのだ。
さっそくぼくは電車に乗って、その人の家に向かった。

「あのう、Yさんからこちらに行ってくれと言われて来たんですが」
「ああ、電気屋さん。ちょうどよかった。この冷蔵庫がおかしいんよ。もう寿命なんかねえ」
「どのくらいお使いですか?」
「うーん、もう15年になるかねえ」
「ああ、そうですか。もうメーカーに部品もないでしょうね」
「そうよねえ。じゃあ、買い直すわ」
ぼくは店に電話して、おすすめの一品を聞いた。
そして、その機種をその人に勧めた。
「ああ、それでいいよ。すぐに持ってきて」
そうやって商談はまとまった。

2日目、前日に電話をかけていた人から情報を得て、テレビが決定する。
3日目も同じように売り上げを作った。
そうやって、与えられた予算をクリアしていった。

終業後、ぼくたちは毎日店長に日報を提出しなければならなかった。
ぼくの日報を見て店長は、「フン、なかなか優秀やないか、しんた君。でも、これがいつまで続くかのう」と嫌みを言った。
それを聞いても、ぼくは気にしない振りをしていた。
内心はそうではなかった。
怒りにうちふるえていたのだ。
しかし、それを口にはしなかった。
ここで何か言ってしまうと負けであるからだ。
ぼくは必至に耐えていた。

外販部隊を立ち上げてから3週目に、ぼくは月の予算を達成していた。
初日に電話をかけまくったのが功を奏したのだ。
4日目以降は毎日売れるようなことはなかったが、それでも何日かおきに売り上げが上がった。
その売り上げを見て、店長は苦々しく思っていたようだった。
「あいつ、本当に売ってきよるんか?」と、各売場に聞いて回っていたようなのだ。
確かに店長一派はぼくの敵だったが、それ以上にぼくには味方のほうが多かった。
そういう人が、「しんたはちゃんと外で売ってきています」とフォローしてくれていた。
それを聞くたびに店長は、不愉快な顔になったという。


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