そこまで連れてこられると逃げるわけも行かず、ぼくは渋々店長室のドアを開いた。 そこには新店長以下、店長一派のお歴々が集まっていた。 新店長はぼくを下げずんだ目で見て、「何しにきたんか」と言った。 「いちおう、朝礼を乱したことを詫びようと思いまして…。すいませんでした」 そう言って、ぼくは下げたくもない頭を下げた。 そして、「でも、ぼくは自分の言ったことは正しいと思ってますから、意見を曲げようとは思いません」と言った。 「おい!」 店長の口調が変った。 「おまえ、朝礼の場がどういうところかわかっとるんか」 「だからそのことを謝りに来たんです」 「そうか、じゃあこれからおまえの行動をよく観察させてもらう。もしまたこんなことがあったら、その時はわかっとるやろうの」 そういうと店長は、「もういい。行け」と言って、ぼくを追い出した。 ぼくはカチンと来て、部署に戻る時に通路の壁を一発殴った。
だいたい、ぼくは最初から、その店長が嫌いだったのだ。 エリート意識旺盛なのか、何となく気障で、人を見下すようなことばかり言っていた。 最初の頃こそ合わせていたものの、だんだんそれが馬鹿らしく思えてきたところだった。
それ以降、ぼくはスパイにつけ回されることになる。 「『その日しんたが何をした』ということを、逐一店長に告げ口する奴がおるけ、気をつけたほうがいいよ」とある人が言ってきたのだ。 「おれ、何も悪いことしてないけ、別にかまわんよ」 そうは言ったものの、やはりつけられていると思うと、あまりいい気持ちはしない。 しかも、その後の情報によると、どうもそのスパイは、あることないことを店長に吹き込んでいるようなのだ。
ある日、「しんちゃん、あんた部下と出来とると?」と聞いてきた者がいる。 「は?誰がそんなこと言ったんね?」 「事務所で噂になっとるよ」 「噂?その噂を流しよるやつの名前を一人一人言うてみ。文句言うてくるけ」 ぼくが怒っているのがわかったのか、相手は「いや、あくまでも噂やけ」と言って、その場から逃げていった。 『もしかしたら、あいつがスパイなのかもしれない』 ぼくはその時、そう思った。
数日たって、今度は他の人間が同じことを言ってきた。 今度は話がエスカレートしていた。 「しんちゃん、あんた部下に手を出したらしいね」 「えっ?前にも○○が同じようなことを言うてきたけど、あいつが言うたんね?」 「いや、かなり噂が広まっとるよ」 「もういい加減にしてくれ!」
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