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2004年11月13日(土) 万引きじいさんを捕まえる

今日は特にこれと言った事件もなかった。
いたって平和な…、ああ、そうじゃなかった。
そういえば、今日は万引きじいさんを捕まえたのだった。

午前中のことだった。
売場で作業をしていると、突然「ボーボー」というが鳴った。
何事だろうと行ってみると、そこに一人のじいさんが立っていた。
そのじいさんの立っている付近から、盗難防止器の音が鳴っていたのだ。

じいさんはカゴにいくつかの商品を入れていた。
ぼくは、その中のどれかが誤って鳴ったのだろうと思い、一つ一つ手に取って調べてみた。
だが、それらの商品には盗難防止器はついてなかった。

「ではどこからその音が鳴っているのか?」と、周りに展示してある商品を調べていった。
じいさんはしばらくそこに立ち止まっていたが、ぼくが音のありかを探しているのを見て歩き出した。
すると、音はじいさんとともに移動していった。
やはり、音の出どこはじいさんからだったのだ。

そこでぼくは、「お客さん、ちょっと待って下さい」と声をかけた。
じいさんは、聞こえないのか無視して歩いていく。
「お客さん」と、ぼくはじいさんの行く手を塞いだ。
と、じいさんはおもむろに、シャツのボタンをはずした。
「何をやっているんだろう」と思っていると、そこからある物を取り出した。
そして、「これかね?」と言う。
音が鳴っているのはそれだった。
見るとペンチである。
もちろんうちの商品だ。
そこでぼくは、「『これかね』じゃないでしょ。そんなところに入れたらだめでしょうが。ちょっと来て下さい」と言って、じいさんの腕をつかみ、事務所裏の商談室まで連れて行った。
じいさんは、はじめは足取りも軽かったものの、事務所に近づくにつれ足取りは重くなっていった。

事務所には誰もいなかった。
ぼくは商談室の鍵をかけ、じいさんをそこに座らせ、「ちょっと待っとって下さい」と言った。
ほどなく店長がやってきた。
「どうしたと?」
「万引きです」
「どこに入れとった?」
「シャツの中です」

それを聞いて、店長はじいさんに向かって言った。
「盗ろうと思ってたんでしょ?」
じいさんは、無視していた。
次に店長は、顔を怒らせて「盗ったんでしょ?」と言った。
それを見たじいさんは、「わたしゃ、耳が遠いもんですから」ととぼけた。
年寄りの万引き犯は、必ずこう言うのだ。
もしくはボケたふりである。

店長も当然そのことを知っている。
そこで、店長は「警察呼ぼうかね」と言った。
じいさん、これだけは聞こえたようで、「買おうと思っていました」と言った。
「あんた、買おうと思った商品はシャツの中に入れるようにしとるんね」
こう突っ込まれると、じいさんは何も言えなくなり、素直に「盗ろうと思いました」と言った。

本人が万引きを認めたのを聞いて、ぼくはそこで商談室を出た。
そのため、その後どういう展開になったのかは知らない。
おそらく説教して買わせたか、警察を呼んだかしたのだろう。
日常茶飯事のことなので、そのへんを店長に確認することはしなかった。
しかし、じいさん、いい歳して何やってるんだろう。
孫もいることだろうに。


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