頑張る40代!plus

2004年09月03日(金) 山嵐(4)

道場に入門してから、2ヶ月近くたった。
あいかわらずぼくは、Kさん相手に『ひざ車』をやっていた。
そんな時、一人の男の人がやってきた。
歳はKさんと同じくらいだ。
ぼくは「この人は金曜日の人か?」と思ったが、違っていた。
新しく入門した人で、Kさんの友人らしい。
おそらくKさんも、ぼくの『ひざ車』に飽きたのだろう。
それで友人を呼んだのだ。

水曜チームは3人になった。
が、他の二人は経験者。
年が離れていて、しかも初心者であるぼくは継子扱いだった。
面白くない。
二人は試合形式で柔道をやっているのに、ぼくは柱を相手に『ひざ車』である。
いったい、いつになったら他の技を教えてくれるのだろう。
思いあまって、ぼくは先生に訴えた。
「先生、他の技も教えてください」
「『ひざ車』一つ満足に出来んのに、何が他の技だ」
そう言われると返す言葉がない。
仕方なく、柱相手に『ひざ車』の練習をやった。

その年の年末だった。
あいかわらず柱相手に『ひざ車』をやっているぼくを見て、先生が言った。
「おまえはいつまで『ひざ車』をやっとるんか?」
「え?だって、先生が他の技を教えてくれないじゃないですか」
「Kたちの練習を見て、自分で技を盗んでいかな」
「どうやって盗むんですか?」
「どういう動きの時に、どういう技をかけるとかをちゃんと見とかな」
「柱で練習している時にですか?」
「・・・。ちょっと待て」、そう言って先生はKさんを呼んだ。

「K、しんたに背負い投げを教えてやれ」
「背負いですか?大丈夫ですか?」
「しんたは小さいから、足技よりもそういう技の方がいい」
ということで、ぼくはKさんから背負い投げを教えてもらうことになった。

「しんた、いいか。こちらがこうして、相手がこう動いた時に相手に飛び込むんぞ」
Kさんは背負い投げのタイミングを教えてくれた。
が、そのタイミングが実に難しい。
しかも、この技は足腰が強靱でなければ出来ない。
その肝心の足腰が、ぼくは弱かった。
すぐに相手に潰されるのだ。
練習では相手が飛んでくれるけど、もしこれで試合になったら、到底出来ないだろう。
そう思ったぼくは、先生に言った。
「先生、ぼくには背負い投げは出来ません。他の技を教えてください」
「バカか、おまえは。背負い投げが出来んのに、他の技が出来るわけないやないか」

と言っているところにKさんが口を挟んだ。
「先生、しんたには背負い投げは合ってないですよ。足腰弱いし」
「そうか。それならどんな技ならいいか?」
「うーん…」
結局答えは出てこなかった。
「しかたない。最初に戻って、型を一通り教えることにするか」
ということで、ぼくはまた『ひざ車』から始めることになった。


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