ここでようやく気がついた。 その目薬は、緩和されたような気にさせる薬で、決して症状を治す薬ではないということを。 「やはりアイボンしかない」と、ぼくは再び薬局に行き、アイボンを探した。 ところが、困ったことになった。 アイボンにはいろいろ種類があるのだ。 どれがいいのかわからない。 ぼくがそこで佇んでいると、パートさんがやってきた。 「アイボン? また、目が悪くなったんやね」 「うん」 「あらー、充血しとるやないね」 「さっきまで、充血はしてなかったんやけどねえ」 「アイボンなんかじゃだめ。抗菌目薬じゃないと」 「でも、ずっと以前こんなふうになった時、アイボンで治ったよ」 「でも、治りが遅かったやろ?」 「そう言われてみれば…」 「ほら、4月頃だったか、眼帯といっしょに目薬買ったよねえ。あれ、まだある?」 そういえば、今年の4月にまぶたが腫れたことがあった。(4月17日〜19日の日記参照) そうだった。その時抗菌目薬を買っていたのだ。 「確か家にあると思うけど」 「それなら、それ使ったらいい。わざわざ買うことないよ」 「そうやね。じゃあ買わん」
とは言ったものの、帰るまでにまだ時間はかなりある。 「やはりアイボンを買っておくか」 とは思ったが、パートさんに「買わん」宣言をした建て前上、買うわけにはいかない。 仕方なく、朝方買った目薬で「緩和された気分」に浸ることにした。
家に帰ったのは午後10時を回っていた。 鏡を見ると、目は真っ赤になっている。 それに伴ってか、かなり痛い。 ぼくはさっそくすぐに手を洗い、抗菌目薬を差した。 しみる。 しばらく目を閉じていた。 3分ほどして、痛みが引いたような感触があったので、目を開け再び鏡をのぞき込んだ。 相変わらず、目は真っ赤である。 「抗菌目薬でもだめか」 と、諦めかけた時だった。 まぶたの奥で、朝から居座っているコロコロが動いた。 動くというよりは、暴れ回っているように感じる。 それがだんだん大きくなっているような気さえする。 その状態が1分ほど続いた後、コロコロが目に刺さるような感触があった。 「痛いっ!」 そうぼくが叫んだ時だった。 目から何かが落ちたような気がした。 それ以降コロコロはなくなり、それに伴って痛みも消え失せた。
【4】 「いったい何が原因だったんだろう?」 前日千石峡や皿倉山に行ったのだが、その時に流れた汗が目に入った記憶もないし、目をこすった覚えもない。 木陰を歩いたものの、途中で雨が降ったわけでもない。 まったくわけがわからない。 とはいえ、思い当たる節がないことはない。 それは、カーエアコンの風である。 普通通りにルーバーを上に向けていたのだが、なぜかその日はやたら風が目に当たった。 何度上を向けても、結果は同じだった。 もしかしたら、エアコン内にこびりついていた菌がエアコンの風で飛ばされて、ぼくの目に入ったのかもしれない。
【5】 さて、コロコロがなくなってから、ぼくは日記を書き始めたわけだが、まさか書き終わるまでに、3日も要するとは思わなかった。 この件に関して書くのは、もううんざりである。
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