ぼくの番が来た。 先生がぼくの前に立った。 その時だった。 ぼくは思わず「先生、切開せんで下さい」と言ってしまった。 すると先生は、「はっはっは、切開するかどうか、診てみらなわからんよ」と言い、医者はぼくの目に光を当てた。 「ああ、これはひどいねえ」 「えっ、切開ですか?」 「うーん、切開ねえ。それもいいけど…。しばらく様子を見ようか。目薬を渡しておくから、それで治らなかったら、もういっぺん来なさい。その時切開するから」 「えっ…」 と言ったものの、ぼくはホッとしていた。 治らなくても、そこに行きさえしなければ、切開されることがないからだ。
帰りに目薬をもらった。 だが、あまり効き目はなく、2日経ち3日経っても目は一向に良くなる気配がなかった。 かと言って、医者に行くのはごめんである。 何かいい方法はないものかと悩んだ末、出た結論が薬局に行っていい目薬を探すことだった。 ぼくはさっそく薬局に行った。 そこで目についたのがアイボンだった。 アイボンを見たとたん、「これで地道に目を洗っていけば治る」という予感がした。 さっそくアイボンを購入し、家に帰ってから何度も目を洗った。 予感通りであった。 ぼくの眼病は、アイボンを買ってから2日後に完治してしまったのだ。
【3】 「やはりアイボンを買うか」 ぼくは車の中で、そう考えていた。 会社に着いてから、すぐに薬局に行った。 ところが、そこで目移りしてしまった。 『異物感に効く』と書いた目薬を見つけたのだ。 価格もアイボンに比べると若干安い。 「これにしよう」とレジに持って行った。
さっそく休憩室に行き、目薬を差した。 心なしか、まぶたの裏のコロコロが緩和されたような気がする。 「やはり能書き通りだ。これを何度か差しているうちに良くなるだろう」 しかし、コロコロがなくなったわけではない。 しばらくすると、またコロコロが気になり出す。 そこで再び目薬を差す。 そんな繰り返しをしばらく続けていた。 ところがである。 トイレに行った時に鏡を見てみると、何と目が真っ赤に充血しているではないか。 それも片目どころか、両目ともにである。
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