2004年03月17日(水) |
ミヤコさんはお休みですか? |
前の会社にいた頃、ぼくの部下にミヤコちゃんという女性がいた。 顔立ちがよく、大人しく、よく気のつく女の子だった。 ぼくが休みの時は、ぼくの代行として頑張ってくれていた。
さて、当時、毎朝主任の朝礼が行われていた。 内容はいつも数字の詰めだった。 予算通りに売り上げが行っている部門はともかく、予算を落としている部門の主任は、いつもくそみそ言われていた。 朝から、よくもこんなに怒れるものだと、変に感心していた。。
それが終わると、自分の売場に戻り、部門の朝礼をやっていた。 主任の朝礼を、そのまま部門に持ち込むわけではない。 数字の詰めといった馬鹿げたことを、部門朝礼でやっていたら、みな気持ちが萎えてしまい、その日の営業に差し支えるのは目に見えている。 そこで、ぼくの部門の朝礼は、まず達し事項を伝え、その日の予算の確認などを、雑談形式でやっていた。
そこでの話だが、先のミヤコちゃんが朝礼の場にいないと、決まって「今日はミヤコさんはお休みですか?」と聞く人間がいた。 誰あろう、モリタ君(エッセイ参照)である。 最初のうちは、別に気にもとめなかったのだが、それが毎回のことなので、ぼくは「おかしいな」と思うようになった。 そこで、ミヤコちゃんが休みの日、例のごとく「今日はミヤコさんはお休みですか?」とモリタ君が言った後で、ぼくはモリタ君に尋ねてみた。 「モリタ君」 「はい」 「あんた、ミヤコちゃんが休みやったら、何か問題があるんね?」 「いえ、別に問題はありません。ただ、今日はミヤコさんはお休みかな、と思って…」 「あのねえ、ミヤコちゃんがこの場にいないということは、休みということなんよ。ミヤコちゃんは、あんたみたいに遅刻せんとやけ。わかった?」 「は、はい」 そう返事しながら、モリタ君は憮然とした顔をしていた。
これで納得したものと思っていたが、また次の時も、同じように「今日はミヤコさんはお休みですか?」と聞く。 他の売場の人間も、おかしいと思っていたらしく、「モリタ君、ミヤコちゃんのことが好きなんね」などと、はやし立てるようになった。 意地の悪いミエコなどは、ミヤコちゃんが出勤している時に、「モリタ君、今日はミヤコちゃんはおるよ」などと言ってからかっていた。 モリタ君は、興奮すると、おでこの真ん中のところが瘤のように膨れあがるのだが、その時も興奮したのだろう。 しっかりと、おでこが膨らんでいた。 しかし、モリタ君は、妙に冷静を装って、「わかってます」と答えていた。
その後、モリタ君が異動になったため、朝礼時の一つの楽しみはなくなった。 が、ぼくはたまに朝礼で、「おはようございます」の挨拶の後、モリタ君の声をまね、「今日はミヤコさんはお休みですか?」と言って、笑いを取っていた。
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