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2004年03月15日(月) 資生堂パーラーのチーズケーキ

先月のバレンタインデーに、久しぶりに多く(一桁だが)のチョコレートをもらった。
もちろん義理ではあるが、それでも悪い気はしない。
しかし、喜んでばかりはいられない。
バレンタインデーにチョコレートをもらうということは、ホワイトデーにお返しをしなければならないということである。

平年は近くのコンビニで適当にお返しを買うのだが、今年はホワイトデー前日が休みだったため、ちょっと指向を変えてデパート(井筒屋)で買うことにした。
井筒屋には、ありきたりのクッキーやキャンディーが数多く並べてあった。
しかもホワイトデーの前日と言うこともあり、かなり多くの人がいる。
その多さにうんざりしながらも、ぼくは何か物珍しいものはないかと探した。

しかし、物珍しいものなんて、なかなか見つからない。
「しかたない。この辺で妥協するか」と諦めかけた時、後ろのほうで嫁さんが、「え、これ、ここにも売ってるんか」と声を上げた。
「何かあったんか?」とぼくが聞くと、「これこれ」と嫁さんはショーケースの中を指さした。
中には他で売っているものと何ら変わらない、何点かのお菓子が並べてあった。
「普通のお菓子やん」
「いいや、これね、銀座の資生堂パーラーで売っているものでね、こちらでは福岡の三越じゃないと手に入らんとよ」
「おいしいんか?」
「うん。すごくおいしいよ」
「じゃあ、これにするか」と、値段を見てみると、予算をはるかにオーバーしている。
「ちょっと高いのう」
「そうやねえ」
と、いったんは諦めた。
とはいえ、他にこれと言ったものが見つからない。
「しかたない。これにするか」
と、人数分をつつんでもらった。

さて、ホワイトデー当日。
ぼくは持って行ったチーズケーキを、バレンタインでお世話になった人たちに渡した。
「ああ、しんちゃん、ありがとう」と、いうお礼の言葉はもらったものの、「え、これ資生堂パーラーのやん」という声はなかった。
おそらく、みな知らないのだろう。
家に帰って、嫁さんから「反響はどうやった?」と聞かれたが、「あげた人、誰も資生堂パーラーを知らんかったぞ」と答えるしかなかった。

ところが翌朝、会社に着いて、休憩室でコーヒーを飲んでいると、休憩室奥にある女子更衣室から、「昨日しんちゃんからもらったチーズケーキおいしかったねえ」という声が聞こえた。
一人が出てきて、「しんちゃん、昨日はありがとう。すごくおいしかったよ、あれ」と言った。

その人が出て行った後、更衣室にいた、もう一人が出てきた。
「あれ、おいしかったねえ。うちはみんなで取り合いやった。普段ああいうものを食べないお父さんまでが食べたもんねえ」

売場に行くと、「昨日のおいしかったよ。私が半分食べて、残りを娘にあげようと思って、テーブルの上に置いてたら、犬に食べられたっちゃねえ。おいしい物は、犬にもわかるんやねえ」と、パートさんが言う。
他にあげた人は、その日は休みだったため、感想は聞けなかった。

それにしても、あげた物が喜んでもらえることは嬉しいことである。
予算をオーバーはオーバーしたものの、これだけ喜ばれると買った甲斐があるというものだ。
ということで、今後も、こういう時のために、普段からおいしいものをチェックしておこう、と思ったことだった。
しかし、犬に喜ばれたのは、初めてだ。


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