そういえば、腰から腹にかけて、痛みのあるところが冷たく感じる。 「冷たいなら温めてやればいい」 そう思って、風呂のスイッチを入れた。 何時間かかってもいいから、痛みがなくなるまで患部を温めようと思ったのだ。
風呂には、2時間ほど入っていた。 心なしか痛みが和らいだような気がする。 だが、まだ万全ではない。 このまま体を冷やしてしまうと、また元通りになってしまうだろう。 そう思って、次の手段をとった。 今度は、ファンヒーターである。 エビのように腰を曲げ、お尻から背中にかけて、ファンヒーターの風を当てるのだ。 これもまた2時間やった。 もういいだろうと思って立ち上がると、もうすっかり痛みは消えていた。 「よし、完治だ!」
ところがである。 ずっとファンヒーターにあたっていたせいか、頭が痛くなったのだ。 時間が経つにつれ、その痛みはひどくなっていった。 とにかく、瞬きしても頭に響くのだ。 時間はもう夜の7時を回っていた。 夕方から降り出した雨がひどくなり、時折雷も鳴っている。 それがまた頭に響く。 そこでまた、風呂に入って頭痛を追い出そうとしたのだが、今度はうまくいかない。
こうなったら寝るしかない、と思ったのだが、風呂で2時間、ファンヒーター前で2時間と、たっぷり睡眠をとっていたので、なかなか寝つかれない。 しかし、体を動かすと頭に響くし、目を開けると必然的に瞬きをするので、これもまた頭に響く。 「こうなりゃ意地だ」と思って、布団の中でずっと目を閉じていた。
気がつけば、もう夜中である。 あいかわらず、頭の痛みは治まらない。 このまま朝を迎えるのかと思うと、気が重くなった。 何度も鎮痛剤を飲むことを考えた。 が、それだけはしたくない。 一度これをやってしまうと、癖になり、薬に頼る弱い子になってしまうからだ。 とにかく、頭に刺激を与えないように、頭を固定し、寝つくまでその姿勢を崩さなかった。
その姿勢に疲れたのか、いつしか眠ってしまったいた。 目が覚めると、午前8時だった。 なんとか頭痛は治まった。 24時間前に腰の痛みを覚えて以来、ぼくはずっと痛みと闘っていたことになる。 前に胃けいれんをおこして、長い時間痛みと闘ったことはあるが、その時は痛み半分、鎮痛半分といった状態だった。 今回のように、一日中寸断なくどこかが痛いというのは、初めての経験だった。
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