頑張る40代!plus

2004年03月04日(木) デス歯科医院(前)

先日、友人のオナカ君から電話があった。
「おい、この辺でいい歯医者知らんか?」
「この辺ちゃ、どこか?」
「H町」
「H町なんか知るか。お前の中学の校区やけ、お前のほうが詳しかろうもん」
「いや、この辺は知らん」
「おれ、そこは知らんけど、G町なら知っとうぞ」
「G町か。ちょっと遠いのう」
「車ならそうでもないやろ」
「で、どこなんか?」
「デス君とこ」
「ああ、デス君とこか」

デス君とは、高校の同級生である。
ぼくは、彼とはいっしょのクラスになったこともなく、それほど親しくはなかった。
だが、その存在だけは知っていた。
彼の存在を知った時には、すでに誰もが「デス」と呼んでいた。
なぜそう呼ばれるのかは知らない。
また、知りたいとも思わなかった。
デス君の話が出たついでに、オナカ君に「何で、デス君なんか?」と聞いてみた。
が、オナカ君も「知らん」ということだった。

デス君の父親は歯科医だった。
学校の近くで開業していた。
ぼくは、たった一度だけ、そこに治療に行ったことがある。
その時、奥歯の治療をした。
通い出して何日か目に神経を取った。
「はい、神経を取ったので、もう痛みはないと思います」
そう言いながら、デス君の父親は、2センチくらいの針をぼくの目の前にちらつかせた。
何をするのかと思っていると、それを神経を取ったばかりの歯の中に突っ込んだのだ。
「い、痛ーいっ!」
ぼくは大声で叫んだ。
デス父は、唖然とした顔をして、「え、痛いかね?」と言った。
「痛いです」
「そんな馬鹿な。神経とったのに、痛いわけないでしょう」
「そう言われても、痛いんです」
「おかしいなあ。残りがあるのかなあ。もういっぺんレントゲン撮ってみよう」
そう言って、デス父はレントゲンの準備をした。

レントゲンを撮った後、先生はぼくにそのフィルムを見せながら、「ほら、もう神経は残ってないでしょう。痛くないんだから」と言った。
そして再び、先生はぼくの歯の中に2センチの針を突っ込んだ。
「痛いっ」
「痛いわけないでしょう」
「痛いんです」
「しょうがないなあ。じゃあ、明日やることにしよう」
そう言って、その日の治療はやめた。


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