先日、嫁さんのもとに一通の封筒が届いた。 嫁さんの出身高校からのものだった。 中身を読ませてもらうと、「卒業生名簿を作りたいのだが、消息のわからない人がいます。もし知っている方がいましたらお知らせ下さい」と、いうようなことが丁寧に書いてあった。 その消息不明の人の名前が羅列してあったが、けっこう多数いる。 ぼくが、「お前んとこ学校は、行方不明者が多いのう」と言うと、嫁さんは「しかたないやん、女子高なんやけ。結婚したら家を出るし、もし実家が引っ越しでもしていたら、わからんようになるやん」と言った。 なるほど、そのとおりだ。
そういえば、10年ほど前だったか、ぼくの出身校の同窓会本部から、同じような手紙が届いたことがある。 ぼくの高校は共学だったため、さすがに女子高よりは消息不明者が少なかった。 ただ、その時の文書は、嫁さんの学校のように丁寧なものではなく、何とオヤジギャグが書かれてあった。 熊のイラストが書いてあり、その熊に「行方がわからないくて、くまっています」と言わせていた。 『くまってます』である。 ぼくはこれを見た時、急に不機嫌になったのを覚えている。
『くまってます』 こういうのはやめてほしい。 同じ時期を同じ空間で過ごしてきた者にとって、このギャグは実に寂しい。 こんなダジャレを書くくらいなら、真面目に書いたほうがましである。 おそらく、『くまってます』を考えついた人の中では、大ヒットだったのだろう。 思わず声を上げて笑ったのではないだろうか。 「これで笑いを取れるぜ〜」とでも思ったのではないだろうか。 しかし、結果はぼくを不機嫌にさせた。 いや、ぼくだけでなく、多くの人が、この『くまってます』で不機嫌になったはずである。
在学中に先輩から聞いたのだが、ぼくたちの高校は、周辺の高校に比べると、ギャグのセンスが高いということだった。 その時は、何を言っているのかよくわからなかったが、卒業後にそのことを充分にぼくは理解した。 他の高校出身者のギャグでは、笑えなかったのだ。 おそらく、それを感じたのは、ぼくだけではなかっただろう。 それなのに、『くまってます』である。 おいおい、伝統を汚すなよ、である。
こういう文書の中で、もしギャグを入れるなら、もっと気の利いたものにしてほしい。 充分に練ったギャグでないと、ギャグセンスの高いOBは納得しないぞ。
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