頑張る40代!plus

2004年03月02日(火) 卒業(後)

その間、学校には何度か行った。
いちおう教室の掃除や、卒業式の練習などをやった。
しかし、みなすでに心そこにあらずで、何となく白けた様子だった。
ぼくはそれを見て、「ああ、高校生活も終わったんだなあ」と思ったものだ。

さて、その卒業式の日の朝のこと。
その数日前から、額の真ん中にニキビが出来ていたのだが、いつまで経っても治らない。
「こんな顔で写真とか撮られたくない」と思い、思い切ってニキビを潰した。
ところが、そのせいで大変なことになっていた。
潰したところが赤く、しかもお多福豆大に腫れ上がってしまい、まるで大仏さんのようになってしまっていたのだ。
痛みを伴っていたので、放っておくことも出来ず、オロナインを塗りたくり、その上からカットバンを貼って、卒業式に向かった。
学校に着くと、会う人会う人から「しんた、お前、おでこどうしたんか?」と聞かれた。
その経緯を話すのも面倒だから、笑ってごまかしておいた。
しかし、これでは写真を撮るわけにはいかない。

式は体育館で滞りなく行われた。
ぼくは心の中で、最後のハプニングを期待していたのだが、それもなかった。
ただ、担任がぼくの名前を呼ぶ時に、ちょっと声を詰まらせたのを覚えている。
3年時の担任は非常に頑固な性格の先生で、校外でも有名だった。
ぼくは、そんな担任の下でもかまわずに毎日遅刻をしていたし、最後は最後で、クラスでたった一人だけ進路を決めないはでやきもきさせたし、まあこんな生徒だったから、やっとやっかい払い出来たと思って、感極まったのだろう。


 『卒業』その3

 面倒くささも手伝って
 ぼくは卒業という舞台に
 それまでしたことの何もかもが
 もうどうでもいいような気がして

 そこからのことを考える
 気力も残ってなくてね
 ただ馬鹿のように笑っていたよ
 それにしては白髪も増えたな

  古い汗の染みこんでいる
  床の上でみんな、
  みんな上品ぶって座って
  中には泣きながら校歌歌って

 ぽつんと青空がのぞいていたよ
 それを見ても何も感じなかった
 もうそんな気力も残ってなくてね
 ただそこにいるのが馬鹿らしく思えた


後年、高校の卒業式を思い出して、こんな詩を作ったのだが、ぼくの卒業式は、こんな感じだった。
そう、ぼくはずっと空を眺めていたのだ。

式が終わり、一度教室に集まって解散となったのだが、ぼくは逃げるようにして学校を後にした。
もちろん、写真を撮りたくなかったからである。


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