2月はあっという間に過ぎ、いよいよ3月に入った。 いつもこの時期なると、ホッとする。 あと4日で啓蟄だし、いよいよ春は動き始める。
そういえば、今日は高校の卒業式だったのか。 ぼくたちの頃も、やはりこの時期だった。 2月の頭に最後の定期テストが終わり、その後は週一度程度しか学校に行かなくてよかった。 学校に行かないからといって、休みというわけではなかった。 大学受験のための自宅学習期間、という意味合いだった。 もちろん、大学に推薦で受かっていた者や、就職が決まっている者にとっては、誰はばかることもない休みであった。
最後の最後まで進路を決めきれず、先生が世話しようとした推薦も断ったぼくにとっては、中途半端な休みになってしまった。 その間、いちおう私立大学二校を受け、卒業後の公立大学受験に向けて勉強するはずだった。 が、私立を受けたところで、当たりが良くなかったので、「勉強はもういいや」という気分になってしまった。 で、何をやっていたのかというと、言うまでもなく、いつものようにギターを弾いたり歌を作ったりしていたのだ。 歌作りに関しては、高校卒業という、二度と経験出来ないことをテーマにした歌を作ろうと試みた。 その時『卒業』という歌を2曲書いたのだが、その1曲は人生をテーマにしたもの、もう1曲は恋愛をテーマにしたものだった。
『卒業』その1
雪は残り、花は遅れていた。 しかし、彼らは知り尽くしていた。 一つの旅が、終わったことを。
みんな、どこでもいいから吹き飛びたいと言った。 というのも、彼らの行くところはなかったから。 一つの旅が、終わった時に。
薄暗い空から、雨も降り始めていた。 でもちょっと見回すと、晴れ間も見えていた。
誰かが死んでもいいと言った。 でも、もう死ぬところもないだろう。 一つの旅が、終わっているから。
何か一つ元気が欠けた。 大人たちは喜んだ。 一つの旅が、終わっていた。
薄暗い空から、雨も降り始めていた。 でもちょっと見回すと、晴れ間も見えていた。
『卒業』その2
ついさっき雨はやんでしまったばかりなんだから、 もうこれ以上ぼくを苦しめないでほしい。 いつも同じように、君はぼくをうかがっている。 でももうぼくの目には、君の顔なんて映らない。 君と話し合えた時、もっと打ち明けるんだった。 同じ言葉を二度も、使わないぼくなんだから。
ぼくがあの川の淵に座っていた時、君は言った。 二人で人生を語り合えるなんて、素敵なことね。 ぼくは狂った。そこから飛び込もうとした。 でも小さな鳥は、羽を広げて誘い込んだ。 二つのカードを握り、火の中に投げ入れるんじゃなかった。 確かにそれがぼくの、いつもの損なんだから。
というわけで、ぼくも今では小さな鳥 古い巣の中から、羽ばたこうとしている。 心の中に小さく君の面影しまい込んで、 新しい巣の中に飛び込もうとしている。
といった、わけのわからない歌を作っていたわけである。 その他にも、卒業をテーマにした歌を何曲か作っている。 こんなことばかりやっていたから、その後の公立大学も合格するはずがなかった。 結局、その後もこんな生活から抜けきれず、長い浪人生活を余儀なくされることになる。
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